#6 埋め合わせが出来ない孤独

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山田「・・・肝心な時に俺達は何の役にも立たなかった・・・という事か・・・。」 「それは・・・」 死霊跋扈は、山田の強烈な私怨により、全ての団員を相良追跡に回した結果、総長である山田も病院に運び込まれて、大勢の団員もすぐに動けない状態になった。 その為、この騒動に対して何の対処もできなかった。 死霊跋扈の本来の目的は、かつて、極道としてこの町の守っていた東誠会に変わり、暴力をもってしての防衛である。 その役割がなされなかった事に、山田は責任を感じていた。 だが、このまま反省をしていても、事態は好転する事はない。 山田「動ける団員に伝えろ。歌舞伎町を巡回し、不審な奴がいたらマークしろ。」 「わかりました。」 山田「それと、この騒動を収めた人間がいるらしいな。」 「はい・・・誰かはわかりませんが、ドスと般若の仮面が特徴の男と、2人組の男が主に戦っていたと聞いています。」 山田「・・・そうか。」 「総長は、どうしますか?」 山田「俺は、少し寄る場所がある。何かあったら知らせろ。」 「はい。それでは、お気をつけて。」 山田の舎弟は、スマホを手に取り、山田からの指示を伝達させる。 山田は一人で細い路地を通る。 しばらく歩き、目的の場所にたどり着いた山田は、ビルの2階にある叢雲探偵事務所を見上げる。 階段を登り、事務所の扉をノックもせずに開けると、中では叢雲と弥田の二人が狭い部屋のソファーに寝そべり爆睡していた。 山田「・・・」 休んでいる二人の事もお構いなしに、叢雲の足を小突いた。 山田「おい、起きろ。」 叢雲「・・・」 山田「・・・」 だが、叢雲が目を覚ます気配はない。 山田はさっきよりも強い力で、叢雲が横になっているソファーを蹴る。 叢雲「ぬお!!」 弥田「何だ!?」 振動で飛び起きる叢雲と、つられて目を覚ます弥田。 山田「いつまで寝てんだ。もう昼だぞ。」 叢雲「随分なご挨拶だな・・・こっちは疲れてんだよ。・・・って・・・お前は・・・」 寝起きの低血圧でかなり不機嫌そうな叢雲だが、突然現れた礼儀も無い輩の顔を見て、何故ここに山田がいるのか疑問に思う。 弥田「あ?」 弥田も目ヤニで視界が悪い中、目を細め、その男が誰か確認する。 弥田「な!!山田!!」 弥田は誰かわかるや、すぐに立ち上がり、山田に詰め寄って睨みを効かせる 弥田「てめぇおいこら!!何しに来やがったこの野郎!!」 山田「・・・悪かった。」 弥田「へ?」 山田の以外にも謙虚で素直に飛び出た謝罪の言葉が以外すぎて、弥田の勢いは一気に萎えた。
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