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山田「・・・」
山田は、何も答えない。
無言、否定をする訳でも、肯定をする訳でもない。
叢雲「何も答えない・・・か。まぁ、ハッキリと根拠を示す証拠は何も見つかっていない。殺害現場に当たる相良家も取り壊され、凶器に使われたであろう物も無い。恐らく既に処分されたんだろう。更に、知り合いに調べさせたが、事件が起こった当日の相良家周辺の防犯カメラの映像は、最寄り駅も含めて全て不自然に消去されていた。だから、人の曖昧な記憶と証言だけが頼りだ。俺が、その上でお前が犯人だと言い切る根拠は、あのぼったくりバーでお前が相良君に強い恨みを持っていた事だ。」
山田「・・・」
叢雲「お前は弟さんを殺された恨みで、相良君を執拗に追いかけ回し、復讐をなそうとしていた。だが、相良君は6年前、明確な殺害の意識は無く、言わば事故だ。恋人を襲われて、助ける為に戦った結果だ。全部が正しかったと言うつもりはないが、俺はこの真実を覆すつもりはない。
だが、お前が相良君のご両親を殺したなら、お前は相良君と『同罪』、いや、それ以下だ。お前は明確な殺害の意志を持って、関係の無い人間を手にかけた。
それでも尚、お前は遺族面をして、相良君を執拗に追い回し、身勝手な復讐をしようとしている。
お前に何の正当性がある?お前には何の正義がある?」
山田「・・・随分と言ってくれるじゃねぇか・・・好きに思えば良い・・・もう放って置いてくれ・・・」
山田は、事務所を出ていこうと叢雲に背を向ける。
その背中、そして、山田の最後の言葉、放って置けという言葉、そこに込められら山田の感情。
叢雲は、この時全てを悟った。
この山田という男が、何をしようとしているのか。
それを考えると、叢雲の中で怒りが湧いてくる。
叢雲「ちょっ待てよ!!」
山田「・・・」
立ち去ろうとした山田の肩を、衣服が千切れそうになる程の力で掴む。
山田「何だよ・・・」
叢雲「歯を食いしばれ。」
山田「あ?」
バン!!
叢雲の全身全霊の拳が山田の顔面を撃つ。
一才の手加減も無い、一才の躊躇や戸惑いも迷いも無い。
純粋な怒りの鉄拳。
山田「ぐ!!」
叢雲「お前マジでふざけんじゃねぇよ!!何勝手に覚悟した気になってんだよ!!なぁ!!」
叢雲は普段は冷静で落ち着いているが、今はそんな面影も無く、怒り狂っている。
山田の胸ぐらを掴みあげ、山田の目を怒りの眼光で睨みつける。
弥田「お、おい、ター坊・・・」
叢雲の普段は見せない態度に、相棒である弥田も戸惑う。
叢雲「放って置けだと?それじゃ、俺達は放って置いたらお前は何をする気だ?普通は犯人呼ばわりされて良い気分になる奴は無い、否定するか焦るか、動揺するかだ。だが、何故お前はそんなに落ち着いている?まるで全て最初からわかっている、いや、最初から決めているみたいな顔しやがって!!」
バン!!
二発目の拳が放たれる。
体制を崩す山田だが、倒れる事を山田の胸ぐらを掴む叢雲が許さない。
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