#6 埋め合わせが出来ない孤独

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山田「・・・」 叢雲「・・・」 山田の目。 それは戸惑いだった。 人間の目というのは、余程訓練されていない限り嘘を付けない。 動きや、目ている方向で、その人間の思考が読める。 山田の目を捉える叢雲の目は、山田の本心ですら読み解いていた。 だが、山田は黙秘を続ける。 叢雲「・・・で?どう何だよ。」 山田「・・・」 叢雲「解らないって目をしてるよな。なんで解らない?お前がすべき事はもっと簡単な筈だ。違うか?」 山田「何だよ・・・それ。」 叢雲「ようやく口を開いたか。どうした?年上でも頼りたくなったのか?」 山田「・・・偉そうにしやがって・・・」 叢雲「ふ・・・解った。」 叢雲は、怒りの表情からいつもの表情へと変わる。 それは、この目の前の山田という人間の心を、少しでも開いた事による安堵の表情だった。 叢雲は山田から手を離し、ソファーに座らせて自分は専用のデスクへと移動し、引き出しを開け、中から相良剣一に関する事件資料を取り出した。 叢雲「俺は、探偵という職業柄、どうしても真実には拘っている。お前にとって、山田翔太とはどういう人間だった?」 山田「何故そんな事を聞く?」 突然の話に、理解が追いつかない山田。 叢雲「質問に答えるんだ。山田翔太とは、どういう人間だ?」 山田翔太、それは山田のたった一人の弟であり、6年前の事件で怒りで我を忘れた相良剣一に、巻き込まれる形で死亡した人物。 山田「翔太は、俺と違って普通の男だ。グレる事も無く、人を思いやれる優しい人間。俺は、翔太には俺の様になって欲しくなかった。 喧嘩ばかりして行き着いた先が極道しか選べない様な、俺みたいな人間にはな。普通の生活を送ってくれる事が俺の望みだった。事実、あいつは喧嘩とも不良とも無縁で、真面目に生きていた。」 叢雲「・・・」 叢雲の表情が曇る。 叢雲「・・・俺は、この証拠を掘り起こす事に正直戸惑っている。まず、絶対に相良君には見せれない。」 山田「証拠?」 叢雲「あぁ・・・6年前のあの日、その現場ではスマホのカメラで一部始終動画を撮影していた人物がいる。これは、実際の裁判でも提出され、審議された。ただ、あまりにも酷い内容だった為、被告の相良君には映像は見せず、検事と俺、そして裁判長のみで確認された。その結果、彼は恋人を助けようとしていた事、周りが武器を持っていて且つ大人数だった事が示されて、彼には情状酌量の余地があると見なされた。 勿論、この映像には、山田翔太も映っている。」 山田「何?」 叢雲「一応確認をするが。見る覚悟はあるか?」 山田「・・・」 叢雲「・・・」 山田「解った・・・」 叢雲「・・・」 叢雲は、デスクの上のノートパソコンに、一枚の小さなSDカードを差し込んでモニターを山田の前に向ける。 その映像は弥田も知らないので、画面を覗き込んでいた。
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