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「お前が気にする事じゃねぇ。」
深田「そう・・・かもしれないですけど。」
「どうした?相良の取材に、あまり乗り気じゃないのか?」
深田「そんな事はないですけど、ただ、過去の事を根掘り葉掘り聞き出されるのは、きっと辛いんじゃないかと思って。」
「・・・上からの指示だ。」
深田「上から?」
「あぁ、うちの役員から突然相良の取材をしろと命令があった。俺もお前と考えてる事は一緒で、今更6年前の事件とその当時者である相良剣一を取材してもいいネタになるわけねぇ。終わった事を今更言いたくないだろう。だが、部長程度になら意見できるが、役員となるとそういう訳にはいかないからな。」
深田「そうだったんですね。」
「理解できない事は山程ある。だが、俺は同時にこうも思った。相良剣一には何か秘密が隠されてる。そう思うと、少しワクワクすんだろ?」
深田「うーん・・・本当にそうなんでしょうか?」
「ま、今はとにかく相良を見つける事だ。」
深田「そうですね・・・考えても何も解りませんもんね。行動あるのみです。でも、横浜中をさがしても何処にもいなくて、足取りも全然だめです。」
「だろうな。だからお前をここに呼んだんだ。」
深田「えっ?」
先輩はデスクの上へ数枚の写真を並べた。その写真には、現在捜索中の相良剣一の姿があった。夜のネオンライトの中に佇む砂色のコートに、ツンツンとしたヘアースタイルで細身の人物。ただ、何処か空虚な雰囲気を漂わせる。
深田「これは相良剣一じゃないですか!!どこにいたんですか!?」
「歌舞伎町だ。たまたま歌舞伎町で取材をしていた記者が目撃したらしい。」
深田「って事は相良は今歌舞伎町にいるんですか!?」
「そうだ。だが、昨晩の深夜から行方はわからない。」
深田「了解っす!!早速歌舞伎町に行ってみます!!」
深田は先輩の出した写真をカバンに入れて、この場から離れようとする。
「あーおい、ちょっと待て。」
深田「なんですか?」
「えぇーっと、その・・・なんだ?」
鬼畜先輩には珍しく、言葉がはっきりしない。
疑問に思う深田。
「ボタン。」
深田「ボタン?」
「あぁ、そうだボタン。相良と接触する時はシャツのボタンを2個程外せ。」
深田「・・・」
シャツのボタンを2個外す事、それは、深田のFカップの胸が目立ち谷間もくっきりと見える状態。
「相良は少年院を出たばかりだ。もちろん禁欲生活を送っていたはずだ。そんな時にお前みたいなのと出会うと欲情・・・いや警戒心は薄れるかもしれない。」
深田「・・・先輩。」
「な、なんだ?俺は先輩として女記者のイロハをだな。」
深田「それ、セクハラっす。」
「なんだとこの野郎!!」
深田「冗談です!!先輩のアドバイス、ありがたく頂戴いたします。それじゃ行ってきます!!」
「あ!!おい!!・・・たく・・・」
深田は駆け足でオフィスを出ていく。
先輩は椅子に座ったまま何か考え事をしていた。
「相良剣一か・・・なんか嫌な予感がするな・・・深田にやらせて本当に大丈夫だろうか・・・」
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