ありえない朝

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「…誰?」 「お母さんよ」 「誰の?」 「あなたの」 「母さんはこんなに若くないし、可愛くない」 そう言った瞬間、すごい勢いで何かが飛んできた。 横を見ると、壁に包丁が刺さっていた。 「言葉に気をつけなさい、優太」 「殺す気か!」 自分は母さんと言っているが、一体何者だ? 「信じられない顔をしているわね?証拠に高校の卒業アルバムを見せてあげるわ」 女の子は卒業アルバムを広げて、写真に指をさした。 写真には女の子と同じ顔が映っている。 名前は下村恵子(しもむらけいこ)。 母さんの旧姓は下村だから、名前も一致している。 卒業した年を確認すると、今から二十年前だった。 信じられないが、どうやら本当に母さんらしい。 「最近買った若返りの薬を飲んだら、女子高生になっちゃった♪」 一体どこで買ったんだそんな薬。 「なんで若返ろうと思ったんだよ」 「優太にはまだ分からないわよね。歳を重ねれば分かるわよ。若いってやっぱりいいわぁ~♪」 母さんは身体をくねくねさせながら喜んでいる。 朝食を食べようと思ったが、こんな母さんを見ながらなんて無理だ。 「ナンパされちゃったらどうしよう~♪」 「頼むから外には出ないでくれ」 友達に見つかったら、色々面倒なことになりそうだからな…。 「母さん、俺は学校へ行ってくる。家で大人しくしといてくれよ」 「困っちゃう~♪」 駄目だこりゃ。 くねくねし続けている母さんを置いて、俺は学校へ向かった。
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