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「私もね、ちょっぴりショックなんだよ。昨夜の君、すっごくカッコ良くて、すっごく可愛かったのに」
喪失感に耐えかねてぐらりと揺れた僕の身体を、支えてくれたのは理香子さんだった。とうとう彼女の身体が、僕の背中に密着する。すべすべで、柔らかくて、触れているところから溶けてしまいそうだった。
「『ずっと前から好きでした』って言ってくれて。一生懸命愛してくれて。私、こんなに守ってあげたいって思った男の子、初めてだったのに……覚えてないなんて、あんまりだよ。私、すっかり貴方の虜になっちゃったんだから」
顎に手を当てられて、とうとう僕は強制的に理香子さんの方を向かされた。鼻先がくっつきそうなくらい近い、理香子さんの顔。瞳が潤んでて、息遣いが熱を帯びてて、バラの香りがムワッと鼻を覆ってきて――ダメだ。もう、自分の気持ちに抗えない。
理香子さん、と僕は掠れた声で呼びかける。理香子さんははにかみながら、僕の声に応える。
「君の『初めて』、今からやり直そう」
理香子さんの唇が、僕の唇に重ねられる。思考も、身体中の力も、ふにゃふにゃに蕩けていってしまう。むせ返るようなバラの香りの中で、僕は理香子さんにされるがままになった。
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