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幼稚園の頃
彼女は小さくて可愛らしいお人形のようなふわふわとした髪で愛嬌のある子で。
私は太めでごつくて男勝りな子どもだった。
ただ、幼稚園の頃は可愛らしい容姿や女の子らしい振舞よりも運動神経が重要だった。そのため運動神経が互角だった私たちはライバル同士だった。だから私は彼女のことを名字で呼び、彼女も私の事を名字で呼んでいた。
「前田、今日は私が勝つからな」
「前野、今日も負けにきたか」
我ながら口の悪い幼稚園児だった。
名字が妙に似ている、ということもありこのような口頭のやりとりをよくやっていた。
私が前田で、彼女が前野。
この時は女子男子の分け隔てがなく皆でドッジボールをやっていた記憶がある。
私も彼女も運動神経が良く活発で声が大きい女の子だった。
だからこの頃は「ガタいの大きい強い女の子」である私が彼女に勝つことが多かった。悔し気に地団太を踏む彼女を見るたびに優越感に浸っていた子ども心をよく覚えている。
でも、彼女に「勝った」と思えたのはこの頃までだった。
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