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 小学生の頃 「前田、勝負だ!」 「前野には絶対負けない」  私は男勝りだから口調が容姿に合っていたが、彼女は可愛らしい容姿に男勝りな口調だったので違和感があった。けれどそれを補正するように髪の毛を全てトップにまとめ上げたポニーテール(いつも編み込みのようなものが見えていたので親がやっていてくれたのだろうけど)にすることにより勇ましさを出していたので『かっこいい』という印象が強かったのを覚えている。  短髪ボブの私とかっこいいポニーテールの彼女。  かっこよくて可愛い彼女の姿を見るたびに、ぼでっとした自分の体形が嫌になっていた。  幼稚園の時はあまり気にしていなかったのに高学年に上がるにつれて「可愛い」「かっこいい」の見た目の区別がわかり始めた私は……少し、ヤケになっていたようにも思う。せめて、見た目以外は勝とう、と。  だからその苛立ちをスポーツに――いや、彼女にぶつけていた。  勝負をしかけあって、私が勝つまで我儘を言って挑みまくっていた。  そのせいか、私たちは仲がいいというよりは犬猿の仲という言葉が似合う関係性にあった。私がそう思っていたのだから、彼女もきっとこの頃はそうだったのだと思う。  その関係性が年を重ねるごとに大きく変わっていくなんてこの時には想像もつかなかったことだろう。  男女の好きが芽生える年頃になると、女同士、男同士というグループが増え始め、幼稚園の時のような男女を混ぜたグループが段々減っていった。  意識し始めたのは小学4年生ぐらいだったと記憶している。  それでも男勝りな私は男子に混じっていた。だけどやっぱり可愛い容姿の前野は女子に混じっていて……男子に意識されて、距離を離されていた。このころの私はわかっていなかった。男子に混じる、イコール、全く意識されていない女子なのだと。
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