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人生三回目の王子は、爪は綺麗であった。しかもガタイの良い騎士タイプで、ラプンツェルの大変な好み。
今度こそ脱出する! そう決意したのも束の間、魔女に逢瀬が見つかった。
さらに不運なことに、騎士王子は魔女のどタイプでもあったらしい。
ラプンツェルと魔女は壮絶なキャットファイトを繰り広げ、結果魔女に負けて、死んだ。
人生四回目にやってきた王子は、非常に美しい男。
線が細く、たおやか。肌はつやつやでドレスを着せたらお姫様になれそうである。
こういった男が昨今、女性人気が高いことは知っている。メイク雑誌で読んだ。
美麗王子は不機嫌そうに眉を顰め、手を差し出した。
「おい、助けに来てやったぞ。ついてこい」
見た目に反して、ドS系であった。
ラプンツェルは「うううううんんん」と悩んだ。悲しいことに、タイプではない。
もっとこう、ゴリゴリした雄々しい男がいい。野性的な毛深いタイプに惹かれる。
だが目の前の男はどうだ。体毛なんて見当たらず、つるっつるである。
一般的にこれ系の男子は人気だろう。しかしタイプではない。しかもドS。
残念ながら、自分自身もどちらかというとS気質なのである。相性が悪い。
悩むラプンツェルを尻目に、ドS王子は「早く来い」と手を引っ張った。
「行きたくない」「来い」を繰り返し、結果、二回目と同様に逆上したドS王子に殺された。
そして五度目の人生。
ラプンツェルは思った。
これだけ死んだのだから、やはり妥協したくない。塔から出たいが、出た後の人生のほうが長いのだ。好みの男と添い遂げたい。
そうしてまた王子がやってくるのを待つ日々に戻ったのだが、ある日、魔女と大喧嘩した。
原因は大したことではない。読みたい本をリクエストしたのだが、魔女が「それは有害図書だ」と却下したのである。
ラプンツェルは憤慨した。ちょっとキッスシーンのある少女漫画を読みたいだけだったのに。
そもそも、魔女は過保護すぎるのである。しかも構いたがり。
数時間おきに登ってくるし、その一度一度に時間がかかる。起きている時間の半分は魔女の相手をしているのではないか。ラプンツェルはうんざりしていた。
そして、そんな魔女に嫌気が差し、衝動的に自分の髪を切り落としてしまったのである。
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