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青白いライトに照らされた水槽を、貴方はずっと覗き込んでいた。
『クラゲを見に行きたい』。
また今日も掴みどころのない思い付きの言葉を口にされて、今となっては随分それにも慣れてきて、「じゃあ水族館だね」と返した。
出会ってからデートは毎回こんな感じ。
空調で涼しい館内は当然あちこちに水槽があって、水の音も聴こえて、目を閉じると水中にいる感覚になれた。
あとは潮の匂いさえすれば海に思えるかもしれない。
そんな事を考えていたら、貴方は、『人間って進化しすぎたのかな…』と漏らした。
陸に上がって、重力に縛られて、足で歩いて、物を考えて。
確かにちょっと面倒だね。
もしクラゲとして生まれても、二人は出会えていたのかな。
世界中の海は繋がっているから出会えるかもしれないし、広すぎて出会えないかもしれない。
急に不安になって、涙が出そうになって、その匂いが海に思えた。
「いつかクラゲを飼うとしたら、1匹じゃなくて2匹にしよう」。
そう伝えた時、振り向いた貴方は微笑んでいた。
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