『人魚姫』の王子の隣国に住む姫の場合 13 <完>

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『人魚姫』の王子の隣国に住む姫の場合 13 <完>

 翌朝― ヴァネッサはメルジーナの腕の中で目を覚ました。メルジーナはまだぐっすり眠っている。メルジーナの顔を見ていると、徐々に昨夜の出来事が思い出されてきた。2人で何度も何度も愛を交わした記憶が…。 ヴァネッサは眠っているメルジーナにそっとキスをした。 (メルジーナ…愛してる…。だから私のするべき事は…) そしてベッドから起き上がると、バスルームでシャワーを浴び、謁見用のドレスに着替えるとヴァネッサは自室を後にした―。  ヴァネッサは国王の自室へ向かうと、そこには忠実な家臣が立っていた。 「おはようございます。姫様」 「ええ、お早う。ところでお父様はまだお休みかしら?」 「いえ。もう起きております、お入りになられますか?」 「ええ」 ヴァネッサはドアをノックした。 『誰だ?』 部屋の中から声が聞こえて来た。 「私です。ヴァネッサです。」 『ヴァネッサか…丁度良い。お前に話があるのだ。中へ入れ』 「はい、お父様」 ヴァネッサはドアを開けて中へ入ると、国王は既に起きており何か書類を書いていた。 「ヴァネッサよ…。もうすぐルーカス王子が出航する。…ヴァネッサに一目会ってから国へ帰りたいと申しておるのだが…どうする?」 「!」 ヴァネッサは身を固くした。 「わ、私は…王子が怖くてたまりません」 国王は溜息をつくと言った。 「あの王子の噂は以前から聞いておった…。色々な女性に手を出す、遊び人だと。あの王子の子供を身籠った女性も何人もいると聞いている。ヴァネッサよ…お前も王子に手籠めにされたのだろう?」 ヴァネッサはその話に羞恥で顔が真っ赤に染まった。 「普通の女性ならいざ知らず…純潔では無い姫を娶ろうとする王族や貴族は誰もいないだろう…。あの王子はヴァネッサ…本気でお前の事を好いているようだが…。しかし、本来であればこの私だってお前にとんでもない狼藉を働いたあの男を許す訳には…。あの場では良い縁談と言ったが、本当はもし王族で無ければその首を刎ねていただろう」 ブルブルと怒りで身体を震わせながら国王は言った。 「お父様…」 「だが、現状今の所傷物にされてしまったお前を娶れるのはあの王子のみ…。どうする?ヴァネッサ。お前の純潔を無理やり奪った男ではあるが…お前の事を愛しているのも事実だ」 「い、嫌です…。ルーカス王子と結婚する位なら死んだ方がマシです…!それに私には愛する方がいるのです。その方と一緒になりたいです」 「もしや、それは昨日の人物か…?確かに見事な宝を所有してはいたが、素性は分からぬし、言葉も話せない男だぞ?」 「今は…その方は言葉を話す事が出来ます!お願いします。お父様‥私はあの方を…メルジーナを愛しているのです」 ヴァネッサは目に涙を浮かべながら言う。 「メルジーナ…?その者の名はメルジーナと申すのか?」 「はい、そうです。お父様」 「う…む。取りあえずはもう一度その者に会う必要があるな。ヴァネッサよ。メルジーナを謁見の間へ連れて参れ」 「はい、お父様」 ヴァネッサは頭を下げ、部屋を下がると急いで自室へと向った。部屋へ戻ってみると、まだメルジーナはヴァネッサのベッドの中で気持ちよさそうに眠っている。 「メルジーナ…メルジーナ。お願い、起きて…」 ヴァネッサはメルジーナの裸の肩に触れ、揺さぶると睫毛を震わせて、メルジーナは目を開けた。 「やあ…おはよう。ヴァネッサ…」 メルジーナは笑みを浮かべてヴァネッサを見つめた。太陽に照らされたメルジーナはとても美しい青年だった。ダークブロンドの髪は金色に光り輝き、アクアマリンの瞳にはヴァネッサだけを映している。 「おはよう、メルジー…んっ」 ヴァネッサは会話の途中でメルジーナに口付けられ、そのままベッドに組み伏せられた。首筋にキスされ、耳元で甘く囁かれる。 「ヴァネッサ…愛している。ヴァネッサのお陰で…人間になれたよ…ん…」 言いながらメルジーナは唇を強く重ね、舌を絡ませてきた。 「あぁ…んっんん…」 ヴァネッサは真っ赤になりながらもメルジーナの熱い口付けに応じたが…我に返った。 「ま…待って…メルジー…ナ…」 深い口付けの合間にヴァネッサはメルジーナに語りかけた。 「どうしたの?ヴァネッサ?」 メルジーナは怪訝そうにヴァネッサを見つめた。 「あのね…お父様が呼んでいるの。すぐに着替えをして謁見の間に来てくれる?」 「うん、いいよ。ヴァネッサ…」 そしてメルジーナはヴァネッサの肩を抱き寄せると、再び口付けした―。  着替えを済ませたメルジーナを伴って、ヴァネッサは謁見の間へ行くと国王の姿が見えない。そこでヴァネッサは近くにいた近衛兵に尋ねた。 「お父様はどちらかしら?」 「はい、陛下はルーカス王子が出向するのでお見送りに行かれました」 「そうですか…。ルーカス王子には最後に顔が見たいと言われたけど…お見送りに行った方がよいかしら‥でも…」 ヴァネッサが震えると、メルジーナが肩を抱き寄せると言った。 「大丈夫。ヴァネッサ。何があっても必ず守るから…。行ってみよう」 「そうね…メルジーナ。一応彼は隣国の王子様だから…」 そしてヴァネッサはメルジーナと共に王室の港へと向かった。  港には国王と家臣たちが集まっていた。ルーカス王子は船を背に、今まさに乗り込もうとしている所だったのだが…。 「王子よ、まだ出航されないのですか?」 国王が尋ねた。 「ええ…まだ姫のお顔を拝見しておりませんからね?」 「しかし姫は…」 言いかけた所をルーカス王子が制した。 「もし姫を連れて来て頂けないのでしたら…私は国へ戻り父にこの国を攻めるように伝えますよ?勿論原因は姫です。私の気持ちを知っていながら、踏み躙ったのですから…」 「な、何だと…。?」 国王はギリギリと歯ぎしりをした。確かにこの国は強大な海洋国家で軍事力もあったが、その強さゆえ、連合軍に加盟してはいなかった。もし、仮にルーカス王子の言う通りに攻められれば…彼の国は6か国と連合同盟を結んでいる。戦いに発展すれば結果は目に見えていた。  その時―。 「お待ちくださいっ!」 ヴァネッサの声が響き渡った。 「ヴァネッサッ!!」 王子が嬉しそうにヴァネッサを見る。ヴァネッサは恐怖を押し殺しながら王子に近付くと言った。 「わ…私は参りました…。ですからどうか恐ろしい考えはおやめになって下さい…」 ヴァネッサは震えながら言った。するとルーカスは笑みを浮かべた。 「ええ、勿論です。ヴァネッサ…。貴女が私と一緒に国へ来て下されば、手荒な真似は致しません」 そしていきなり、ヴァネッサの腕を掴んで引き寄せると抱きしめて来た。 「ヴァネッサ!!」 国王が叫んだ。 「いいですか…私はこのまま姫を国へ連れて帰り…正式な妻とします。もし手荒な真似をしようものなら…」 その時、背後で突然高波が起こった。そして王子とヴァネッサを高波が攫って2人は海の中へ落ちてしまった。 「ヴァネッサッ!!」 メルジーナが叫んだその時…。人々が海を見つめて騒ぐ声が大きくなった。何とそこにはヴァネッサを抱えた14人の人魚たちの姿があったのだ。 「姉さん達っ!」 メルジーナは駆け寄って来ると、人魚たちは気を失っているヴァネッサを抱え上げると、メルジーナに託した。そして一番長女の人魚が言った。 「メルジーナ…あなた、人間と恋が成就したのね…」 「はい、そうです。私は…この女性を愛しています」 そして気を失っているヴァネッサを抱きしめた。他の人魚たちは甲板に上がったルーカス王子を取り囲むと次々に言った。 「いい?今後この国に手出しをしようものなら嵐を呼んで国を亡ぼすわよ?」 「船を転覆させるのもありよね?」 そして、散々脅された王子は泣く泣く船に乗って自分の国へと帰って行った。 人魚たちは国王たちに言った。 どうかメルジーナとヴァネッサを結婚させてやって欲しいと。そうすれば1年中この国には海の恵みを与えると―。 勿論、国王はその提案を喜んで受け入れた。 「う…ん…」 その時、気を失っていたヴァネッサが目を開けた。見るとそこには愛しいメルジーナが心配そうに覗き込んでいた。 「ヴァネッサ…喜んでくれ…。国王が私との結婚を認めてくれたんだよ」 「え…?本当に…?」 「うん。本当だよ、ヴァネッサ…愛してる…」 「私も…愛してます…」 そして2人は国王や人々に祝福されながら口付けを交わした―。 こうしてヴァネッサと人魚のメルジーナは結婚し、夫婦になり子供も沢山もうけて一生幸せに暮らしました― めでたしめでたし― <完>

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