新作落語『初めてのお迎え』

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 さて、こちらは死神養成所。  新米の死神を一人前に育て上げるべく日夜研修が行われております。  死神の教官がレポートの採点をしておりますと、先日下界に向かわせた新米死神が帰ってきましてんけど、なんや元気がないようです。後ろに茶色い虫を引き連れております。 「おう、どうやった?うまいこといったか?」 「それが…そのぅ…」しょんぼりして、どうにも歯切れが悪ぅございます。 「うまいこと成仏させるのんは難しかったんか?」  教官はニヤニヤ笑いながら尋ねはりました。 「いや、成仏させたかどうかっちゅうより…冥土に呼び込めたんかどうかもようわからんというか…多分でけてへんのちゃうかと・・・」 と新米死神、さめざめと泣き始めたんですわ。 「泣いてたら何もわからへんやろが。いったい何がどうやったんか、詳しゅう話してみぃ」 「はあ……」  鼻をすすり上げながら新米死神がぼつぼつと話したところによりますと……。  老人の側には、なにやら手ごわい子供がおって、突き飛ばすわ、死神払いの呪文を唱えるわで、追い払われてしもうたということでございました。
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