新作落語『初めてのお迎え』

13/16
前へ
/22ページ
次へ
「はっはっは!」教官は大笑い。 「お前なぁ、クライエントの住所と名前、しっかり確かめてみ?」 「へっ?」  新米死神が懐からメモを取り出して眺めてみましたらば・・・。 「あれっ!もしかしたら・・・?」 「気ぃ付いたか?お前、人違いしたらしいなぁ」 「うわぁぁぁ~!」  新米死神は頭を抱えてつっぷして、さらに大泣きですわ。 「まあ、すんだことはしゃぁないわ。うっかりこっちに連れてこんでよかったやないか」 「あのぉ…本来お連れするべきやったクライエントさんは……どないなったんでしょう」 「ああ、お迎えがこやへんて、息吹き返しはったみたいやな。  もうこれまでと覚悟しとったのに助かったんやから、これからは世のため人のために尽くして生きるて、公園の掃除なんぞしてはるらしいで」 「以後気を付けます!」頭を床に擦り付けて謝ってはりました。 「ま、初めてのお迎えなんて、皆こんなもんじゃ」  そして教官は新米死神の足元を見て付け加えました。 「お前についてきとるそのGさん、キッチリ成仏させてやるんやで」 とまあ、Gさんも成仏できまして、めでたしめでたし。 夢之屋Holly「初めてのお迎え」でございました~!
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加