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宣誓!今日私はあなたの友達を卒業します!
「宣誓! 今日私はあなたの友達を卒業します!
思えば長く苦しい三年間の片思いでありました。
時に泣き、時に悶え、時に苦しみ、時に七転八倒いたしました。
かと思えば、時に笑い、時にときめき、時に喜び、時に狂喜乱舞いたしました。
でも、それも今日、この日で終わりにしたいと思います!
ありったけの思いを込めた言葉とともに、とどけ! あなたに私の思い!
今日、私は、あなたの友達を卒業します!
私は、今日、あなたの恋人になりたい!」
卒業式。
屋上からそう叫んだ私の声に、あなたが振り返る。
グラウンドに散らばる生徒の顔が、みんな一斉にこっちを見てギョッとしているのが、離れているのにもかかわらず良く見えてしまって、私はとたんに足が震え出すのを感じた。
さっきまで王様にでもなった気分だったのに。
思わず顎を引く。
あなたの表情を見るのが怖い。
軽蔑されただろうか、侮蔑されただろうか、気持ち悪いと思われただろうか。
だって私とあなたはずっと友達だったから。
ずっと、ずっと友達だったから。
私があなたを友達だと思っていなかったと知ったら、あなたは悲しむだろうか、苦しむだろうか、辛いだろうか。
一気に申し訳なさが込み上げて、後ずさりしそうになるのを堪えた。
だって私は卒業するのだ。
そう決めたじゃないか。
私は、今日、あなたの友達を、卒業する。
どういう結果が待ち受けていたとしても、私はそれを受け入れて、卒業するのだから。
そう決めたんだから。
逃げたいのは、きっと私じゃない。
ほんとうに逃げ出したいのは、こんな大勢の中でこんなことを言われた、あなただ。
私は顔をあげた。
あなたを一直線に見る。
そこにあなたは居なかった。
ああ、そりゃあそうだ。
逃げるだろう。
こんな三年間の積もり積もった気持ちなんか、重たくて仕方がない。
こんなにみんなが見ている場所で、恥ずかしいことをされて、喜ぶヤツなんか、居ない。
私は見事友達を卒業した。
予定通りもう、友達ではない。
もう、あなたと私は友達ですらない。
フェンスにもたれるように額をくっつけた。
ガシャリとなったそれは、私の片思いが砕けた音のようだった。
「卒業、おめでとう、私」
ぼそりと呟けば、じわりと視界が滲む。
ぎゃあぎゃあと泣いてしまいそうになって、ギリギリのところを耐えた。
赤ちゃんみたいに泣きじゃくるのは、家に帰ってからだ。
耐えろ。耐えろ。耐えろ。
おまえはよくやったさ!
だってちゃんと卒業したんだから!
踵を返そうとした、私の背後でガチャリと音がした。
「ねぇ!! いまの!! 本気!?」
弾かれたように振り返れば、息を切らせて、髪を振り乱して、制服もよれよれな、あなたがそこに居た。
「本気だよう」
震える声で返せば、あなたは汗だくな額を腕で拭いながら、私に近寄ってきた。
私の両腕を掴むと、口を開く。
「卒業おめでとう! あと、永久就職おめでとう! おまえは今日から死ぬまで恋人です!」
と。
キラキラした笑顔であなたが言った。
私は耐えきれず、ぎゃあぎゃあと泣き出した。
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