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夏目 青葉、高校一年生。俺は今、一人暮らしをしている。
家はまぁまぁ田舎の方にあって、受かった高校が街の方だったがために渋々親元を離れて引っ越してきたのだ。
今日も朝早くから学校なので、俺は電車に乗って高校まで向かっている途中だ。
ガタンガタンと力強く揺れる電車の中、吊側を掴みながらスマホをいじる。
画面の上から通知が振ってきたかと思えば、親からの連絡だと気がついた。
『青葉、またお父さんが転勤になったの』
へぇ、そうなんだ。うちは幼少期からずっと転勤家系だった。あちこち色んな県に回ってやっと2年ほど前にこの県に落ち着いたかと思えば、また転勤か。
今までは両親に金魚のフンの如く付いて行っていたが、今回は違う。そう、俺は一人暮らしの真っ最中なのだ。
どうせ隣の県とかだろう、と思っていた矢先、続きの連絡が届く。
『ごめんね、次は海外に行くことになっちゃったみたいで』
「は?!海外⁉︎」
思わず声を張り上げる。周りを見渡すと、電車に乗っていた人たちが迷惑そうな顔でこちらを見ていることに気づき、ぺこりぺこりと頭を下げた。
もう一度スマホに目を落とす。間違いなく、海外とのことだ。
『カナダに行きます。私はお父さんについていく予定だけど、青葉どうする?』
どうするって言われても、俺はこちらに残るしか選択肢がないだろう。高校も入って数ヶ月経ったし、友達もできた。
まだたくさんやるべきことが残っているのに、こちらを離れる訳にはいかない。
『俺はこっちに残る』
そう、一言だけを返した。
そうしている内に電車が目的の家まで辿り着く。俺はスマホをリュックにしまいこんだ。
チラリと見えたスマホには、母から『そういうと思った』と返信があったようだった。
駅を出て、高校まで歩く。ここは高校から超最寄り駅のためにとても登校が楽だ。正直、駅からもしっかりと高校が目視できる。
それほどにまで近く、俺のような怠惰な人間にはラッキーとしか言いようがなかった。
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