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広い道路に出て、横断歩道の手前で信号が青になるのを待つ。真夏の時よりも少し控えめな暑さを催す陽の光は、俺の視界を煩わしく遮った。 俺は待ち時間でスマホを見ようとリュックに目を向ける。 すると、突然右足が一歩前に出た。「えっ」と思わず声が出る。目の前は道路、たくさんの車が交互に通り過ぎていく。 俺は咄嗟に左足に力を込めて、勢いよく後ろに下がった。体は重心を保てなくなり、後ろに下がって俺は大きく尻餅をついた。 信号を待っている同じ高校の学生は突然尻餅をついた俺を見て、「大丈夫?」と声をかけてくる。 反射的に「大丈夫」と返事をしたが、心臓はまだ警告を鳴らしていた。 ゆっくりと後ろを振り向いてみるが、俺と目が合うのは奇怪な目や心配そうな目だけだった。 多分、近くにいた人たちは俺の不注意だと思ったのだろう。 だが、本当は違う。今、勢いよく背中を。 急いで立ち上がると、信号が青になった。何事もなかったかのように平然を装い、俺は学校へと向かった。 靴箱でスリッパと靴を入れ替えていると、「よ」と声と共に肩を叩かれる。振り返ると、高島圭太の顔があった。 彼は高校で初めてできた友達であり、とてもいいやつだ。 「おはよ」 「おはよ、さっきお前転んでただろ」 見られていたのか。 「見てたなら助けろよ」 「すまん。遠かったから。お前が歩くのがはえーんだよ。俺これでも走ってきたんだからな」 よく見ると、彼の頬は高揚していた。首筋には汗が浮き出ている。嘘ではないようだ。 「許してやる」 「ははー。青葉様、てかお前本当によなぁ」 運が悪い、圭太にはそう思われているらしい。運が悪いか‥。 思い返してみても、俺はあの時誰かに背中を押されたとしか思えない。 胸の中に溜まるわだかまりを、俺は見ないふりをした。
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