Episode.2

3/15
前へ
/37ページ
次へ
 快斗が発した声からは、面倒臭いとか鬱陶しいとかじゃなく、確かに申し訳なさが感じられた。  七瀬は一瞬聞き間違いかとも思った。快人がそんなことを言うとは思ってもいなかったのだ。  それでも快人が謝ったことは事実だ。七瀬は驚いた顔をしたあと、少しホッとしたような笑みを浮かべた。  そして、驚いていたのは快斗に怒鳴りつけてきたあの3人も同じだった。今までの快斗の態度からして、こうもあっさり謝られるとは思っていなかったのだ。  快人にだって、悪いことをしているという自覚はあった。傷付けて申し訳ないという気持ちもあった。  でもだからといって、誰かと関わるつもりがないのも事実だった。  だから続けてこうも言った。 「だけど、もう話しかけないでくれ」  それだけ言うと、教室のドアに向かって歩き出した。  その後ろ姿を3人が引き止めようとしたが、七瀬がそれを止めた。    快斗はそのまま教室から出て行った。  教室を出た快人は、そのまま購買に行き適当におにぎりをいくつか買って、食べる場所をどうするかを考え始めた。  そこで快斗が思いついたのは屋上だった。普通の生徒は屋上には入れないが、特待生の快人は屋上に入る鍵を持っている。  快斗は屋上に向かって歩き始めた。  快斗が持っている屋上の鍵というのは、生徒だけでなく教師も1人1枚持っているカードキーのことだ。カードキーなんて普通の学校ではあり得ないだろうが、ここは金持ち達が通う金持ち校だ。どこもかしこも金がかかっている。  普通の生徒のカードは白色、特待生が灰桜色、教師が紫紺色、風紀委員と生徒会役員は灰色、風紀委員長と生徒会長、そして理事長は黒のカードをそれぞれ持っている。  このカードキーが、各自の寮の部屋の鍵になっている。そして、色が濃くなるごとに開けることの出来る扉が自分の寮部屋だけではなくなり、少しずつ増えていくのだ。  白色のカードキーでは屋上に入ることはできないが、特待生が持つことを許される灰桜色からは入ることができるようになっている。  さらには、食堂や購買などの学園内にある店での支払いもこの1枚のカードで済ませることが出来るようになっている。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

358人が本棚に入れています
本棚に追加