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快斗は、1秒でもはやくここを立ち去ることにした。ちょうどもう食べ終わるところだったので、残りを急いで口に詰め込みマスクをつけ、ゴミを片付け立ち上がる。その間たったの5秒だった。
そして美形2人は、快人が立ち上がるまでの間に、快人の方に向かって歩いてきていた。
快人はやっぱりこの状況だと接触は避けられないか、と悟った。だが、自分の方に向かってくるのはただ、自分のことを特待生と知らず、屋上にいる理由を聞こうとしているのだと快人は思っていた。
だがそれは間違いだった。
快斗の前まで辿り着いた2人が、快斗に話しかける。
「鈴木快人君ですよね?初めまして。私はこの国城学園の生徒会副会長を務めている西園寺黎と言います。
そして、私の隣にいるのが、生徒かi」
「俺は、生徒会会計の雛川璃ね!よろしく〜!」
まず最初に声をかけてきたのは、''副会長''だった。快斗は、なぜこんな場所まで副会長が自分に会いにきているのか全く見当がつかなかった。
どうして快斗が副会長を知っているかいえば、入学式で司会進行を務めていたのが、この副会長である西園寺だったからだ。
西園寺はとにかく’’綺麗''で、ふわふわとした亜麻色の髪に紺青の瞳をしている。
まだ、西園寺が話していたのに、それに割り込む形で声を上げた生徒は、自ら’’会計''だと名乗った。西園寺とは正反対の印象を受ける、とにかく’’チャラい''感じの生徒だった。サラサラの明るい茶髪に、同じ色の瞳。制服を着崩し、耳にはキラリと朱く光るピアスをつけている。
2人は快斗の名前を知っていて、何の迷いもなく快斗に声をかけてきた。つまりは、自分に会いにきたのかと快斗はここで察した。でなければ、わざわざ屋上にまで来て自分に自己紹介はしないだろうと快斗は考えた。
しかし、なぜなのかが快斗には分からなかった。しかも、なぜ快斗が屋上にいるとわかったのかもわからない。
副会長の西園寺は会計の雛川を見て呆れたように溜息をついた後、快斗に向けて言葉を続ける。
「今日は鈴木君に少しお話があってきました。ちょうどここは人がいませんし、少しお時間よろしいですか?」
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