359人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、まさかは断られるとは思わなかったよねぇ。ね、黎?」
ここで口を開いた雛川は、意外感を言葉で示す。
「えぇ、確かにそうですね。正直に言って驚きました」
それに同意して驚きを直接口にする西園寺。
それにただ、そうですかとだけ返す快斗。
そんな快斗を見て、雛川がこう言う。
「快斗君くんって、変わってるね」
そこには、今までの会話では常に感じられていた、雛川のどこかチャラけた雰囲気は消えていた。そのかわりに、妖しげな雰囲気を醸し出し、妖艶な笑みを浮かべていた。雛川の方が快斗より背が低いこともあって必然的に上目遣いになっている。そこに雛川の美貌も相まって、どこから出しているのか快斗には全くわからない色気を感じさせていた。
そんな突然の雛川の豹変を前にしても先程となんら変わらない様子で「そうでしょうか?」と言う快斗。
その快斗の様子に、雛川は浮かべていた妖しげな笑みを消し去り快斗を伺い見た後、今度は面白いものでも見たようにふっと笑う。そこには先ほどまで感じられていた色気などなくなっていて、年相応の、少しヤンチャっぽさが感じられる笑顔があった。
「そうだよ〜。普通俺たちと関われるってわかったら、みんな即答でやります!って答えるのに、快斗くんは断っちゃうんだもんなぁ」
そう、ニコニコしながら話す雛川。
そんな雛川をチラッと見たあと、西園寺が喋る。
「こんなことを自分達で言うのもなんですが、確かに璃の言う通りです。首席が鈴木君ではなかったら、生徒会との関わり欲しさにすぐに引き受けられていたと思いますよ」
「それにねぇ、快斗くんは俺たちと話していてもずっと普通でしょ?みんなもっと慌てたり、緊張したり、はたまた媚を売ってくるみたいに話すのに、快斗君は全然そんなことないからさぁ。快斗君、ほんと変わってるよ!おもろしいねぇ〜」
「あまり言い過ぎると鈴木君に失礼ですよ、璃。でも、本当にそうですね。鈴木君は常に落ち着いていて、話していても不快感を感じません」
それはつまり、快斗以外と話すときは不快感があるということなのかと快斗は思ったが、特に気にかけず「はぁ」と気の抜けた返事をする。
正直に言って快斗はこのとき、そんなことはどうでもいいからはやく帰ってくれないかなと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!