プロローグ

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   窓から春の暖かな日差しが差し込む部屋に、1人の男がいる。    その男は20代半ばほどの、まだギリギリ青年と呼べるような若さに見えるが、重厚な机に向かって、何か書類に目を通しているようだった。  底なしの闇を思わせるような漆黒の髪に、瞳は髪と同じ色で、俗にイケメンと呼ばれる顔立ちをしていた。 その部屋には紙の擦れる音と、男の小さな息遣いだけが静かに響いていた。 そこに突然扉を叩く、ノックの音が響く。 男は書類から顔を上げ、「どうぞ」と一言声をかけた。 「失礼します」と言いながら入ってきたのは、部屋にいた男に引けを取らないほどの美青年であった。髪は驚くほど綺麗な銀色で、光の加減によっては透き通った白にも見える。大人っぽい落ち着いた雰囲気を感じるが、よく見るとまだどこか少年っぽさが残る顔立ちをしている。 だが、表情はひどく無機質で、感情を感じさせない。 青年が男のいる机の前まで行くと、男が座っていた椅子から立ち上がり、口を開く。          「ようこそ。我が国城(くにしろ)学園へ。お待ちしていました。これから、よろしくお願い致します」 青年は「いえ、こちらこそ」と応えた。 「さっそくですが事前にお伝えした通り、あなたにはこの学園に入学していただき、生徒となってこの学園を守っていただきたい........どうか、よろしくお願いします」と深刻な表情で言って、男はどう見ても年下であろう青年に向かい、頭を下げた。 「頭を上げてください」 少し慌てたような表情で青年はそう言い、男に頭を上げさせた。 続けて、 「お任せください。この学園のことは必ず守ります。それが、俺の仕事ですから」 部屋に入ってきた時と同じ、感情が抜け落ちたような無表情に戻って青年は言った。  窓の外では、爽やかな花風が吹き抜けていった。
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