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「だめですか?」
言葉に詰まった快斗にダメ押しを仕掛ける西園寺。
「鈴木君と色んなことを話してみたくなったんです。週に一回でもいいんです。どうかこれからも会ってもらえませんか?」
「俺も、ダメ?」
2人は本気で、快斗に生徒会見習いを断られるとは思っていなかった。
2人はいつも周りの生徒からキャーキャーと持て囃されていて、だからきっと快斗もそうなのだろうと思っていた。自分達に直接生徒会に誘われては、目の輝きを隠せないままでしな垂れかかってくる他の奴らと、同じことになると、思い込んでいた。
でも、快人は違った。断られたことで、今までにないくらい衝撃の受けた。2人は知りたくなったのだ。快人がどんなことを考えているのかを。
快人は迷った末に答えを出した。
「お二人と関わりを持って、親衛隊の方々に目をつけられることになっては困ります。申し訳ないですが、わざわざ約束をしてまで会うことは出来ません」
正直に思っていることを告げることにしたようだった。
快人は一息に言い切った。これを聞いて2人がどう出るかによって、快人のまだ始まったばかりの学園生活がどうなるのかが、決まると言ってもいいだろう。
快人の言葉に、先に口を開いたのは雛川の方だった。
「じゃあ、事前に約束をしないなら、会ってくれる?俺、快人君とお喋りしたぁーい!」
確かにそんな風に聞こえてもおかしくない言い方ではあった。だかやはり、雛川の言葉は、誰が聞いても屁理屈にしか聞こえないものだった。
「では、たまたまどこかで出くわせば、またお話ししましょう」
だがその雛川の屁理屈に、西園寺もまた、笑顔を浮かべて同調するのだった。
快人は本当に頭が痛い思いだった。
だがしかし、こんな屁理屈を押し通してくるような2人なのだ。もう一度拒否したところで、今度は無理矢理にでも快人のところへ押し掛けてきそうだ。
「わかりました。もしどこかですれ違ったりしたら、また」
快人はこう答えるしかなかった。
「ありがとうございます!」
「やったっ!!」
その快人の答えに大きく喜びの声を上げる2人だった。
「では、もうそろそろ失礼します」
そんな風に素っ気なく別れの言葉を言い、2人の横を通り越してこの屋上の扉へと向かう快人。
それを、下の階まで一緒に降りようと呼び止める声を上げながら、西園寺と雛川は追い掛けるのだった。
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この時はまだ、この先あんなことが起こるとは、誰も予想していなかった。
快人はこの時点では、少し厄介なことになったと思っていただけだった。
西園寺と雛川はただ、今までにはいなかった、面白い後輩を見つけたと思っていただけだった。
いつ歯車は動き出していたのか。
この日、快人が副会長と会計に気に入られたことだったのか。それとも、快人がこの学園に入学してきたことなのか。はたまた、それらよりもっと前の出来事だったのか。
それはまだ、誰にもわからない。
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