Episode.2

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 快人はなんとか西園寺と雛川と別れ、今は職員室に向かっているところだった。  快人があのあと屋上の扉を開けてエレベーターに向かうと、2人は快人が行くところに着いていくと言って快人を追い掛けてきた。それでも、なんとかエレベーターを降りたところで追い返すことに成功した快人は、やっとの思いで1人で静かに廊下を歩いているところなのだった。    特待生の特権である授業免除を使うには、教師への報告が必要になっている。今向かっている職員室には、その申告を教師にするためだった。    快人がいた屋上から職員室までは、走っても20分ほどかかる。生徒会の2人と話していたことで、昼休みの残り時間はあと10分程度しかない。このままでは絶対に間に合わないだろう。    いま快人がいるのは3階だ。3階には1年生の教室があるが、それらの教室とは正反対の位置に快人はいる。そして、快人が目指す職員室などは教室がある棟とは別になっていて、教室棟の隣に建っている特別棟にあるのだ。ちょうど快人がいる場所の窓からは、中庭を挟んだ向かいに特別棟が見える。  ちなみに、特別棟の最上階である4階には理事長室があって、その下の3階には生徒会室や風紀委員室がある。2階には会議室などがあり、1階が職員室という風になっているのだ。  そこまで行けばいいのだから、今快人の目の前にある窓から飛び降りて、特別棟の窓から中に入ることが出来れば、大幅なショートカットになるだろう。ちょうどよく、特別棟の1階に空いている窓がある。  だが、''普通''は誰もそんなことはしない。出来ればいいなと考えることはあっても誰も出来ないのだ。3階から飛び降りるなんて自殺行為に他ならないだろう。もし飛び降りれば、怪我をするだろうし、怪我で済めばまだマシで、普通なら命を落とすことになってもおかしくない高さだ。  これは小さな子供にだってわかるだろう。  だがしかし、そんなことをしない限りはチャイムには到底間に合わない。  この状況では、誰もが諦め気味に走り出すか、開き直ってゆっくり歩いて行くだろう。  だが快人が取った行動はその2つのどちらでもなかった。  快人は周囲を見渡し、他に人がいないことを確認してから、すぐそばの窓を開け放った。  
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