Episode.2

15/15
前へ
/37ページ
次へ
ーーーーーーーーーーー  時は数十分ほど遡り、快人が出て行ってすぐの教室でのこと。 「七瀬様、大丈夫ですか?あんなやつの言ったことなんて、お気になさらないでくださいね!」 「そうですよっ!七瀬様に誘われて断るなんて、どうかしてるんですから!」 「本当に!七瀬様に傷付けるようなことをするなんて、許せないです…!」  あの小柄な生徒3人が、七瀬に話しかけているようだった。  3人にそう慰められた七瀬は薄く微笑んで口を開く。 「ありがとう、みんな。僕はもう大丈夫だから。お昼食べに行ってきなよ」  その微笑みと優しい言葉に3人は薄らと頬を赤く染めた。 「ありがとうございます。本当に七瀬様はお優しいですね…」  真ん中に立っていた1人が、うっとりとそう呟いた。    3人は、出来たばかりの七瀬の親衛隊だった。初等部のころから七瀬に惚れ込み、中等部でも七瀬の親衛隊に所属していた。そして高等部に入学して即、七瀬の親衛隊設立を生徒会に申し込んでいた。   「またなにかあれば、是非何でもおっしゃって下さいね!」  そう笑顔で言って、3人は食堂に向かうのだろう、教室を出て行った。  七瀬は「ありがとう」とだけ答え、3人を見送った。  七瀬は友達がいなかった。元々の性格は人見知りなところがある上に、中等部でも親衛隊があったため、制裁を恐れて誰も近寄ってくることはなかったのだ。  だから、外部生であった快人に声をかけてみたのだった。まさか、ここまで拒絶されることになるとは、七瀬も思っていなかったのだ。  ちなみに、親衛隊は生徒会に申請書類を提出して、受理されれば作ることが出来る。  しかし、中等部では親衛隊を作ることは許されていなかった。だがそのため、認められなくても自分たちだけでと、非公認の親衛隊が多く作られた。そんな非公認の親衛隊が後を絶たないので、教師陣、学園長側で、もう許可をしてしっかり管理をした方がいいということになった。そのため、数年前から中等部でも親衛隊が認められている。  七瀬は、またこれからもぼっちのままかと、内心でため息が止まらなかった。  それでもいつの間にか下を向いていた顔を上げて席から立ち上がり、自分も昼食を食べに教室を出るのだった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

359人が本棚に入れています
本棚に追加