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そこでずっと様子を見ていた九鬼が口を開く。
「用はそれだけですか?」
「あぁ、そうだ」
九鬼の言い方は聞きようによってはさっさと帰れとでも言っているようだったが、相模には特に何も気にした様子はなかった。
「断られたんなら俺は別にそれで一向に構わない。だが、お前たちも分かってるだろうが誰か他のやつを誘えよ。入ってすぐは何の戦力にもならんだろう見習いもしばらくすれば結構役員たちの負担を減らせるようになってくる。誰かは入れねぇと、後々困ってくるのはお前らだぞ?」
それに役員たちは揃って九鬼の方に顔を向ける。
「確かにそうですね...。会長、どうなさいますか?」
「首席に断られたんだし、」
「順当にいけば次席の子を誘う、とかー?」
「なるほどねぇ〜」
「かいちょ...どうす..?」
役員たちはそんな会話をしてから、会長の言葉を待つ。
相模も特に何も言わず、九鬼の反応を窺う。
九鬼はこの部屋にいる全員からの視線を一身に受けながらゆっくりと口を開いた。
「そうですね。とりあえずはさっき役員たちには言ったように、一旦保留にします。具体的には、5月の終わりまで。5月が始まればすぐに新歓がある。その後は中間考査。その結果から考えても遅くはないでしょう」
九鬼のその判断に役員たちは「「りょーかい!」」「はぁ〜い」「わかりました」と各々返事や、頷きを返していく。
相模はその間、目をスッと細め九鬼を見つめていた。
特に何かを言うわけでもなく、肘をソファの肘置きにつき手で顎を支えた姿勢をして、ただ何かを探るような目を向けていた。
だが、「はぁ」と決して小さくはないため息をついたかと思えば、
「そうか。じゃ、俺はもう戻るわ」
そう言って相模は机に置いていた書類を手に持ち直し、立ち上がった。
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