4月.入学

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 国城学園の、1000人ほどを収容することのできる講堂では現在、新高校一年生が入学式を迎えていた。 「続いては、学園長よりお祝いの言葉です」 舞台袖近くに立つ1人の生徒の紹介から、壇上に学園長が現れ、式辞を述べ始める。 「満開の桜と木々の新緑、美しい草花がうららかな春の日差しに映えております。この生気がみなぎる春の日に、多くの......」 今年もまた例年通り、国城学園に新入生が入学してきた。  国城学園は他の学校とは一線を画する。とにかく、''普通''ではないのだ。  国城学園とは、全寮制で小中高一貫の男子校だ。そして進学校であり、とても偏差値が高い難関校でもある。ここまではまだ普通の範疇に入る学校だろう。しかし、この学園に通う生徒には、大手企業の社長や重役、芸能人などの子息、有り体に言えば、金持ちの家の子供が多い。生徒の家が金持ちが多いため、学園の敷地や校舎はとにかく広くて大きい。そして、普通の学校ではあり得ないほど、豪華絢爛だ。  廊下には、素人目にも高価な物だとわかる美術品が当然のように飾られ(それも十や二十ではない)、ただの教室の机や椅子も質の良い物が使われている。さらには、無駄に校舎が広いため、教室も数多くあり、普段ほとんど使われていないような教室もあるほどだ。そしてどの教室どの部屋も一様に、とにかく面積がデカい。この時点で、あまり''普通''とは呼べない学校といえるだろう。    生徒が大企業の社長の息子だったりすることから、セキュリティ面を考えて、学園はもとは初代理事長の私有地であった山に建っている。それも麓ではなく、山奥に建っている。そのため学園内に入れば、学園関係者以外と関わることは滅多にない。  そして、ここからが一番重要であり、一番''普通''でないことになる。    この学園は全寮制であるために、生徒は小学校入学から高校卒業まで、山にある閉鎖的な場所でずっと過ごすことになる。つまりは、思春期真っ只中の男子高校生だけで常に過ごし、異性と過ごすことが少ない。そのため、恋愛対象が異性に向くことが少なく、ゲイまたはバイが生徒の多くを占めているのだ。  さらに''普通''と程遠いといえる点は、この学園にある生徒会と風紀委員会だろう。この学園の生徒会役員と風紀委員会は教師よりも強い権限を持っている。それは先程述べたような生徒の家柄が良いこともあるが、普通の学校では教師がするような行事の企画・運営や、学園を経営する上での必要な仕事なども行なっているからである。普通の学校ではあり得ないほどの仕事量を生徒達で行うのだ。  そのため、学園内の序列は理事長、生徒会、風紀委員会、学園長、教師、一般生徒、の順になっている。  その生徒会役員と風紀委員会幹部を決める方法も''普通''ではない。他の学校であれば選挙などが行われるのだろうが、国城学園では生徒達による、とあるランキングの上位者が就任することになっている。  それが「抱きたい・抱かれたいランキング」である。男子校ではあるが生徒達のほとんどがゲイ・バイで占められているため、毎年行われている。  つまりは、容姿、または家柄が重要視される学園なのだ。 とにかく、''普通''ではない。  一部少し変わった趣味を持つ者たちなどからは、'' 王道学園''と呼ばれる学園である。
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