Episode.1

2/3
前へ
/37ページ
次へ
 それからしばらくすると席も全て埋まり、ドアから1人の男が入ってきた。その男が中に入ってきた瞬間、教室のそこかしこで叫び声が上がった。 「キャーーー!!黒崎センセェー!!!」 「はぁ、相変わらず色気がすごい......」 「カッコいいぃぃっ!!!」 「抱いてくださぁい〜〜!!」 「相変わらずホストだなっ!!」  あまりにも聞くに堪えないものばかりだった。ただ、そう思っているのは、少なくとも教室の中では快斗だけだった。  仮にもここは男子校のはずなのに、まるで女子のような甲高く黄色い悲鳴が響いていた。1人、何か違う生徒もいたようだが。    このタイミングで入ってきたことと、先生と呼ばれていたことから、このクラスの担任なのだろう男は、女子ならばつい叫びたくなるのもわかるほどのイケメンだった。  だがしかし、あまり教師には見えない格好だった。というか、全くそうは見えず、むしろ職業でいえばまるでホストのようだ。髪は染めたのであろう金髪で、襟元を肌蹴させたシャツに、ネクタイをだいぶ緩めてつけていた。 「おい、静かにしろ」 と、ホストにしか見えない教師が言うと、一斉に教室が静かになった。 「まぁ、まずは入学おめでとう。1年間お前たちの担任をすることになった黒崎千秋、担当教科は英語だ。よろしく」  このとき快人以外の生徒は、このクラスでよかった…!と思っていたが、快人だけは、このクラスはオカシイ奴らばっかりだと思っていた。 さらに黒崎が続けて 「今日は明日の予定の確認と、配布物だけ配ったらもう終わりだ。とっとと寮に帰るように」 「まず、明日だが、さっそく通常授業が始まる。時間割りとか持ち物は今から配るプリントを見るように。他にも注意事項とかこれからの予定表とかも載ってるから、一応全体に目を通しておけよ」 そう言ってプリントを配り始めた。 配り終えると本当に「じゃ、かいさーん」と言って、教室から出て行った。  このときは、クラスメイト全員の考えが一致していた。「もう行ってしまった....」と。  ただし、それに伴う感情が惜しみか呆れかの違いはあったが。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

358人が本棚に入れています
本棚に追加