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それから生徒たちはそれぞれ寮に帰るために、教室を出始めた。
この学園の生徒達が住む寮は、普通の生徒の場合は2人部屋だが、特待生には1人部屋という特権が与えられている。ただし、定期テストでの成績が学年の上位10名以内に入っていなければ、特権は剥奪される。
特権には1人部屋の他にも、授業免除や学食、学園内にある生活必需品などを揃える店の無償での使用などがある。
このような特権は生徒会役員や風紀委員にも与えられている。
そして、特待生である快人にも、もちろん与えられているわけである。
快人も周りの生徒達と同じように寮に帰ろうと立ち上がったとき、左隣に座っていた生徒が快人に声をかけた。
「ねぇ君、特待生の鈴木快人君だよね?僕は七瀬悠、隣同士これからよろしくね。もしよかったら、一緒に寮まで行かない?」
快斗に声をかけたのは、七瀬悠という生徒だった。この七瀬という生徒も、黒崎先生とはまた違うタイプのイケメンで、爽やかな笑みを浮かべて、快人の様子をうかがっている。
そんな七瀬の方に顔を向け、快人はこう言った。
「他を当たれ」
その声はとても冷淡で、断るにしてもとてもキツい言い方だった。
快人は、''友達''などというものは作らないと決めていた。必要最低限以上に人とは関わらない、と。
だから、快人はそれだけ言って、さっさと背を向けて教室を出ようとした。
「ちょ、ちょっと待って!」
だが、七瀬はもう一度快人を呼び止めた。
七瀬はただ、隣の席だったから仲良くしようと思っていただけかもしれない。が、そんなこと快人には関係なかった。快人はとにかく、人と関わりたくなかった。だから、快人は無視して教室を出た。
もうそれ以上、快人を呼び止める声は聞こえなかった。
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