3-1『紗江』

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 紗江ちゃんのことは本当に結婚したいくらい好きなんだ。でも、彼のことも愛してる。どちらかを選ぶなんてことは、ぼくにはできない。  つまり颯人さんは、わたしと結婚して結婚生活を送りながらも、男性の恋人とも今まで通り付き合っていきたいんだって、わたしにそう言ったの。  都合のいい話よね。そんなの受け入れられるはずもない。  わたしは颯人さんを責めたわ。その時のほうが今より狂ってたんじゃないかと思うくらい。口汚く彼を罵った。 「どうしてわたしだけじゃ駄目なのよ!」 「もう結婚式の日取りも決まってるのに、今さら婚約破棄だってできないし、そんなことしたらわたしが惨めじゃない!」 「男なんて子どもも産めないのに!」 「わたしを抱いて、その人には抱かれるの? それとも抱くの? 気持ち悪い!」  彼の顔を見るたび、わたしはありとあらゆる言葉で彼を侮辱し、厳しく責めたて……精神的に追い込んでいった。体裁があったから結婚を取り止めるなんてできなかったし、なんとしてでも相手の男性と別れさせてやるって思ってたの。
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