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そしたら──颯人さんは死んでた。
首を吊って、もう息をしてなかった。
遺書はなかったけど、すぐにわたしのせいだって思ったわ。でも、言えなかった。颯人さんのご両親がどこまで彼のことを知っていたかわからないし、なんて説明すればいいのかもわからなかったし……それに怖かった。
だって、わたしが殺したも同然なんだもの。
でもね、それはすぐに知れ渡ることとなった。わたしが言わなくても、彼にはもうひとり、事の次第をよく知る恋人がいたんですもの。どんなふうに話したのかは知る由もないけれど、葬儀に出向いたわたしをお義母さんは門前払いしたわ。
「帰ってちょうだい」
「あなたのせいであの子は死んだのよ!」
「大人しい顔をして……あなたは悪魔よ! 鬼よ!」
「あの子がなにをしたっていうの……あの子がどれほどあなたのことを愛していたと思うの……っ」
たぶん、お義母さんは颯人さんがバイセクシャルだってことを知っていたんだと思うわ。お義父さんが知っていたかはわからないけど、きっと颯人さんは、わたしのことも彼のことも、お義母さんには話していたんでしょうね。
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