3-1『紗江』

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「あんたこそ……」 「え?」 「あんたには子犬がお似合いよ。じゃあね」 「……子犬?」  振り向かず勢いよく戸を開けて、綾美が病室を出ていく。その逞しい後ろ姿を紗江は少しだけ羨ましく思う。  もう自分には、颯人も隼人もいない。ぽっかりと心にあいた大きな穴。それが埋まるのは一体いつなのだろうかと、紗江はため息をついて目を閉じた。
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