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「調査報告に参りました」
「はい?」
「雨宮柊くん、ご存知?」
「ええ、まあ……」
雨宮柊、その彼こそが紗江が室戸に捜索を頼みにいった『嶋田翔』本人である。
「うん、その雨宮くんからね、依頼を受けまして」
「柊くんから?」
「そう。で、その調査報告はあなたにしてほしいんだと」
そう言って室戸は封筒の中から書類を取り出し、メガネをかけると紗江に報告をはじめた。
「まず、上田綾美さんのその後ですが、彼女は現在都内の某オフィスで働いています。恋人なし。見たところ生活も安定していて、休日にはひとりでショッピングに出かけたり、飲みに行ったりと、おひとりさま生活を満喫している模様」
「……」
「なにか質問があれば答えますよ?」
「あ……見た目はどんな感じでした?」
「見た目? えーと、髪は肩より少し長くてゆるふわっていうの? パーマがかかってて、なかなかの美人さんだね」
「そう……良かった」
綾美の幼い顔だちには、ショートカットより女性らしい髪型のほうが似合う。隼人に少しでも好かれようと男の子のように短くしていた髪が、紗江は見ていて切なかったのだ。
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