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「騙すってそんな……」
「だってそうでしょ。そのー……なんとかっていう病院に行っても彼はいなかったわけでしょ」
「ええ、まあ」
「で、なんだ……同じ名前のスタッフはいたけど別人だった」
「そうです」
意外にちゃんと話を聞いていてくれたのだなと、紗江は少しほっとする。
「でもって、電話は繋がらない。向こうから連絡もない」
「そうです」
「原田さん……そうですじゃないのよ、ったく。詐欺。ね? それは結婚詐欺」
わかったらとっとと帰ってくれとばかりに、また室戸が大きなあくびをする。紗江とて馬鹿ではない。室戸に言われずとも、その可能性も考えた。だが。
「翔くんにお金は一銭も渡してないんですよ?」
あくび途中の室戸が「ふぇ?」と妙な声をあげる。
「だから騙すもなにも、お金はとられてないんです」
「……高価なものを買ってあげなかった?」
「ないです」
「えーと、じゃあ、なんだ。なにか売り付けられたとか」
「ありません」
「んん……じゃあ、あれだ。宗教。カルト。入信したりは?」
「してません」
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