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室戸の来訪から一週間後、紗江はとある施設の前に立っていた。
──さくら園?
ひょいと中を覗いてみると、庭には雪がうっすらと積もり、少ない雪をかき集めて作ったであろう、土に汚れた雪だるまが一体、所在なさげに佇んでいる。どうやら養護施設のようだった。
門をくぐり入り口扉の前にくるも、自動のそれは施錠されているらしく紗江を迎え入れてはくれなかった。仕方なくインターホンを鳴らしてみる。
すると、すぐに職員らしき女性がやってきて、自動ドアの鍵を外し両手で扉を開いてくれた。
「すみません。子どもたちが出ていかないように鍵をかけてあるもので」
「いえ、こちらこそ急に訪ねてきて申し訳ありません。あの……こちらに雨宮柊さんがいると伺って来たんですが……」
柊の名前を出すと若い女性職員は、ハッとしたように目を見開き「園長!」と大きな声で後ろを振り返った。ほどなくして初老の品の良い女性がやってくる。
「まあまあ、なんですか。大きな声をだして」
「あ、すみません。えと、こちらの方、雨宮さんを訪ねていらっしゃったんですって」
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