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男性に興味がないわけではなかったが、外見だけで群がってくる男が綾美は苦手だった。むろん、外見が良いに越したことはなく、きっかけは顔であってもそのうち中身まで愛してくれるようになることもわかっている。それでも綾美は虚しかった。
まるで中身の見えないプレゼントボックスのようだと思う。
綺麗な包装紙とキラキラしたリボン。それだけを見て中になにが入ってるかも知らないで、騒いでいる男たち。小さく質素な箱にダイヤモンドが入っていることだってあるだろうに。
「ねえねえ、綾美ちゃんはどんな人がタイプ?」
誰かの質問に辟易としながら、綾美が口を開こうとした瞬間──端の席に座っていた男が黙って席を立った。先ほどから唯一、綾美に興味を示さなかった男。
それが、今村隼人だった。
「あ、ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってきます」
どうしてか綾美は、隼人のあとを追って席を立っていた。
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