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そうして綾美は、隼人と知り合いになり、友人になり、親友となり──今に至る。
「綾美、そろそろ定期検診じゃないのか? 今度はぼくも一緒に」
「ううん、いい。隼人は仕事忙しいでしょ」
「でも……」
「ほんとに大丈夫だから」
隼人はとても優しい。妊娠が発覚した時は動揺をみせていたが、それなら紗江とのこともケリをつけると覚悟を決めてくれ、今はこうして平穏に暮らしている。
隼人の子を産むことは、綾美にとって夢であり希望でもあった。子どもができれば、きっと隼人も変わってくれる。きっとわかってくれる。そんな想いから綾美は子どもを作ることを強く望んだ。
『隼人に迷惑はかけないから』
『迷惑とか、そういうことじゃなくて……綾美だってわかってるだろう?』
子どもを作ることを隼人はしぶったが、最終的には根負けし「綾美がそれでいいなら」と承諾してくれたのだった。
「綾美、悪い。ちょっと出かけてくる」
日曜の午後。隼人はそう言って身重の綾美を残し、さっさと玄関へと向かっていく。少し突き出たお腹を押さえながら綾美はそのあとを追う。
「何時頃、帰ってくる?」
「んー? ちょっとわかんないな」
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