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──ところが、事態は急変する。
『おかけになった電話番号は現在使われておりません』
アパートの一室で、紗江は先ほどから何度も同じアナウンスを聞いていた。隼人との離婚が成立してから一週間。その間、紗江は何度も翔と連絡を取り合っていた。だが、なかなか互いの都合がつかず結局会えず終いで、そして今、翔と連絡すら取れなくなってしまった。
──翔くん、どうしちゃったのかしら。
電話番号を変えたなら連絡してくれてもいいのにと呑気なことを考える傍らで、もしかしたら事故にでも遭ってその連絡すらできない状況にあるのかもしれないと、急に不安が押し寄せる。つい昨日までは電話で話していたのだ。早く紗江さんに会いたいと、翔はそう言っていた。その電話を最後に連絡が取れなくなった今、紗江は迫りくる不安を振り払うことができなかった。
呆けたように一点を見つめていた紗江だったが、ハッとなにか思い付いたように慌ててスマートフォンを操作しだす。翔の勤め先である『大倉総合病院』は紗江のかかりつけでもある。だから電話番号は登録済みだ。どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのかと、紗江は逸る気持ちをおさえながら病院へと電話をかけた。
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