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『──はい。大倉総合病院でございます』
「あ、あの……リハビリ科の嶋田さんをお願いしたいんですが」
『リハビリテーション科の嶋田ですか?』
「はい。嶋田翔さんです」
『あの、失礼ですが……』
「あっ、原田です。原田紗江と言っていただければ」
『原田様ですね。少々お待ちください』
電話が保留に切り替わり、オルゴールの音が聞こえてくる。そのメロディを聞きながら、よくこうして隼人にも電話をかけ怒られたものだと、紗江は昔を懐かしんだ。
『お待たせしました。原田様、大変申し訳ありませんが現在嶋田は電話にでることができません。なにか伝言があればお伝えしますが……』
「……わかりました。じゃあ、仕事が終わったら連絡してほしいとお伝え願えますか」
『はい。必ずお伝えします』
電話を切ると紗江は安心したように、ほうっと息を吐き出した。出勤しているのだから事故に遭ったわけではないようだ。きっと忙しくて連絡できなかっただけなのだろう。
紗江はそう思い、きっと今夜訪ねてくるであろう年下の恋人のために夕食を作って待つことにした。
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