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夕貴とはじめて会ったのは隼人と知り合ってから一年が過ぎる頃だった。
「綾美に紹介したい人がいるんだ」
そう言って隼人が連れてきたのが夕貴だった。隼人に好きな人がいることは知っていた。そして、その人になかなか告白できず悩んでいたことも。
「はじめまして。濱田夕貴です」
にっこりと笑ったその人は綺麗だった。
「あ……えと、綾美です。上田綾美」
「ははっ、なーに緊張してんだよ」
緊張した面持ちで夕貴に挨拶する綾美を見て、隼人が肩を揺らして笑っている。
「ちょっと。そんなに笑ったら失礼だよ」
笑う隼人に夕貴が腕を引っ張って窘める。その様子に綾美の心はざわりと音をたてた。嫌な音だった。
「え、あの……もしかしてふたりって……」
片想いだと聞いていた。告白はまだまだできそうにないとも──だが、ふたりは顔を見合わせ幸せそうにほほえみあうと、笑顔を崩すことなく綾美に向き直った。
「実は付き合うことになったんだ。綾美にはいろいろと相談にのってもらってたから一番に報告したくて」
「そ、そうなんだ。なによ、もう。早く言ってよ」
「はは、ごめんごめん」
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