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そして今、その過去を清算する時がきたのだ。夕貴が死ねば隼人は深い悲しみに襲われるだろう。それを支えてやれるのは自分しかいない。そのためには絶対に捕まるわけにはいかないのだ。
誰にも見られずに夕貴を殺し、悲しむ隼人に寄り添う。そうすればきっと隼人だって自分を愛さずにはいられなくなる。綾美は本気でそう思っていた。
『綾美だけだよ、こんなことを話せるのは』
隼人は綾美によくそう言った。なんでも話せるのは綾美だけ。わかってくれるのは綾美だけ。綾美にとってそうであったように、隼人にとっても綾美はかけがえのない存在だったのだ。
例えそれが嘘の上に構築されたものであっても──。
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