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その合コンをきっかけに隼人と綾美は少しづつ仲を深めていった。
見た目とは裏腹な綾美の物怖じしない態度や、こざっぱりとした性格が隼人は嫌いではなかった。本当ならあの夜で二度と会うこともなかった相手である。それを繋げたのは綾美の積極性ほかならない。
そうして友人付き合いを重ね、三ヶ月が過ぎる頃──。
「隼人さんは結婚とか興味ないの?」
行きつけの居酒屋。ふたりはカウンター席の端で肩を寄せ合っていた。
「結婚かぁ……」
枝豆の殻を皿に戻しながら、隼人が遠い目をする。
「そっちは?」
「わたしが聞いてるんだけど」
「はは、ごめんごめん。うん、そうだね。いつかはしなきゃならないのかな」
したいではなく、しなきゃならない。まるで義務かなにかのようにつぶやく隼人に、綾美が不思議そうな顔をする。
「……本当は結婚なんかしたくないってこと?」
「うーん……したくないというよりは、できないのほうが正しいかな」
「なにそれ。そんなこと言ったら隼人さんの恋人になる人が可哀想じゃん」
隼人とて、好きな人と結婚できるのであれば是が非でもしたいと思っている。だがそれは、現状では絶対に叶うはずのない夢物語だ。
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