2-3『隼人』

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 綾美になにがわかるもんかと思う。それでも、ふと、もしかしたら理解を示してくれるかもという希望が顔をだす。多少酔っていたせいもあるかもしれない。けれど、一度胸にわきあがった淡い希望は、砂漠の中で水を求めるように、まっすぐに綾美へと向かっていった。 「綾美ちゃん」 「うん?」 「ダメなんだよね……」 「なにが?」 「──女の人」  綾美がぽかんと口を開けたまま固まっている。その顔を見て、失敗した、これで友人付き合いも終わりだと、隼人は急速に酔いが冷めていくのを感じていた。 「ごめん。今の聞かなかったことにして」  席を立とうとする隼人を、綾美が慌てて引き止める。 「待っ、待って。大丈夫。わたし、そういうの偏見ないし──」  隼人の腕を掴んだまま、わずか逡巡する綾美。時間にすれば三秒ほどだったかもしれないが、ふたりには長い長い時間のように思えた。すべてが時を止め互いに互いの顔しか見えない。喧騒が遠ざかり、隼人の耳に綾美の声だけがクリアに聞こえてくる。 「──わたしも同じだから」
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