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外はもう真っ暗で夕貴が勤めている花屋の周辺は人通りも多くない。昼間はそうでもないが、夜になるとほとんど人が通らないから駅までの道が少し怖いのだと、前に話していたことを急に思い出す。
迎えに行こう。
すれ違いにならないよう、夕貴へと電話をかける。コール三回で繋がった。
「夕貴? 今どこ?」
『今ちょうどお店閉めたとこ』
「そっか。迎えに行こうか?」
『え、いいよ。お客さんと話しこんじゃってね、それでいつもより遅くなったんだ』
歩きながら喋っているのか車の走る音が聞こえてくる。
「気をつけろよ」
『ふふ、うん──あ、』
「夕貴?」
不意に声が途切れ、電話の向こうで女の声が聞こえてきた。
「夕貴? おいっ、返事してくれ!」
嫌な予感がする。聞こえた女の声は、綾美の声のようにも聞こえたし──紗江の声のような気もした。
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