2-4『柊』

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 そうして柊の計画通り、紗江は隼人から離婚を言い渡され、しばらくは消えてしまった翔を探すのに躍起になっていたが、綾美の偽装妊娠ですべてがパーになった。  隼人が綾美と偽装結婚していること。  同性の恋人がいること。  そして偽装とは知らなかったが、綾美が妊娠していることも柊は知っていた。  隼人に見せた写真は、隼人とその恋人である夕貴が腕を組んでホテルに入っていくところをおさめたものだ。同性愛者である隼人が結婚しているとなると、当然綾美はそれを知らないか、納得した上での偽装結婚でしかない。隼人と綾美の様子を見る限り、隼人が夕貴の存在を隠している素振りがなかったので、柊はふたりの結婚を偽装だと断定したのだ。  だが、妊娠のことだけは納得がいかなかった。互いに同性のパートナーがいて、その上で子どもが欲しいというのならわかる。けれど、どんなに調べても綾美に同性の恋人がいるという情報を掴むことはできなかった。  結婚のみならず妊娠まで偽装だったとわかった今は、綾美が同性愛者ではなかったという結論しかない。綾美もまた今村隼人に執着し、どんな手を使ってでも一緒にいることを望んだモンスターだったのだろう。
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