2人が本棚に入れています
本棚に追加
「まったく…次からは誰かに知らせるんだぞ。呼んでくれれば行くからな。」
「はーい…」
説教されていたが、やっと終わった。と言っても10分くらいだが。
服はイダの魔法で変えてもらった。
もうイダは私の中ではお兄ちゃんだ。今から『イダ兄ちゃん』とでも呼んでみようかな…。そうなると私は手のかかる妹か…。イダみたいな兄は悪くないな。
「…2人は仲がいいんだね。」
ぼそりと聞こえた声に私は振り向く。さっきの身分の高そうな男の人だ。
さっきから置いてけぼりだったのを思い出した。男の人にとってひどい扱いをしてしまったようだ。
「…すみません。私ここに来たばかりで存じ上げないのですが…。あなたは
どちら様でしょうか…。」
何故か分からないけど、この人どこかで見たことがある気がする…。
イダがにやっと笑い、男の人の背中をバシッと叩いた。
「あははっ!お前認識すらされてねーんだな。ドンマイ~!」
「…うるさい…ヘri……イダ。」
なんだろう…一瞬、イダの目が鋭くなったような…。
「僕はリエル。ため口で話してほしいな。君のことは噂に聞いているよ。
異世界から召喚した子だよね。君のことをなんて呼べばいいかな?」
「う~ん…イダ、何て呼ばせたらいいの?」
身分的にどう呼ぶかは悩みたくなくても悩まなきゃいけないのだ。この世界観からしてこの人は間違いなく身分が高いはずだ。本人が良くても周りが許さないことだってある。それに、いくら身分が高くても相性が悪ければ仲良くしても裏切られることだってある。仲良くするのはできるだけ自分に害がない方がいい。
そんな考えはイダにはお見通しだったようだ。
「好きに呼ばせればいい。茉莉花に意見できる奴なんてこの世界には
いない。『愛しきシンドウ様』とでも呼ばせとけよ。」
「「!!??」」
イダの予想外の言葉に、リエルと一緒に面食らってしまった。
「…じゃあ…茉莉花でお願い…。リエル」
「…あぁ。よろしくね茉莉花。」
私は苦笑いしながらリエルと握手を交わした。
その後、なんとかギリギリでマリーナが来る前に部屋に戻れた。
もちろん服を元に戻して、だ。マリーナは多分気づかないふりをしてくれている。
それにしても、リエルはいったい何者だったのだろうか…。
それを知るのはもう少し後になるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!