3 取引と親交

1/4
前へ
/13ページ
次へ

3 取引と親交

目が覚めて、意識がはっきりしてきたが、それでも何が起きたのか理解が追いつかなかった。 夢を見ることはよくあるが、それは大抵が現実と関係ないものだった。 (でも今のは…) 今の夢は少年がネックレスについて何か知っていたようだった。 夢は夢だと言われればそれまでだけど、今の状況と何か関係があるように思えた。 (…何か秘密でもあるのか…な…?) ネックレスに触るが、特に何も起きなかった。 やはりただの何の変哲もないきれいなネックレスだ。 すると、部屋にノックの音が響いた。 (誰だろう…) 「シンドウ様、ホンドウ様がシンドウ様にお話があるそうです。  会われますか?」 マリーナさんの声が部屋の向こうから聞こえる。 「…分かりました、お願いします。」 そう答えると同時にバンッと扉が開いた。 「茉莉花。こっち来て」 本堂さんがこっちに向かって手招きをしてきた。 (…ん?今、茉莉花って読んだ…?ここは合わせておくべきか…) 「…分かった。桜」 私はベッドから起き上がって本堂さんに近づいた。 何故か本堂さんの顔は赤かったが、きっとそういう体質なのだ。 色々考えていても仕方ない。もう気にしないことにしよう。 私の部屋を出て、本堂さんの部屋に移動した。 本堂さんの部屋は美容グッズや服の装飾品が大量に積まれていた。 一体こんなに使うことがあるのだろうか… 「さて…話というよりも取引というほうが正しいかしら…」 本堂さんは振り返って私を見た。 強いまなざしが、真剣だということを伝えてくる。 思わず構えてしまう。 (取引…いったい何の…) 本堂さんは、にやりと怪しく笑った。 「それぞれの持つ情報の共有をしましょう。  聞かれたことに噓なく答えるの。それが私が今望むことよ。」 「…分かった。私も気になることがあったの。」 断る理由もなく、聞きたいことがあるのは本当なのでそう答えた。 「交渉成立ね。」 本堂さんはうれしそうに笑った。 だが、この後私は予想外の質問に戸惑うことになるのだった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加