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取引が成立し、ちょうどいいタイミングでマリーナさんが呼びに来た。
「お夕食のご用意が出来ました。」
(もうそんな時間…?)
時間を確認してみると、もうすぐ18時だった。
こちらの世界に来たのは大体7時、教祖の話が終わったのが9時くらいだ。
本堂さんとの取引に10分もかけていないから、寝ている時間が思っていたより長かったようだ。
意識したからか、小さくおなかの音が鳴った。もちろん私のおなかが、だ。
(…人に聞かれるのはいささか恥ずかしい…)
聞こえてしまっただろうが、2人とも聞かなかったふりをしてくれた。
「早く行きましょ」
「う、うん」
案内されて入った部屋は広い部屋で、長いテーブルと椅子があり、周りに観葉植物や装飾品が置いてあった。ひとつひとつの造りが豪華でどれも高級品だ。
(この国は政治がうまくいっているのかな…?)
そんなことを考えていると料理が運ばれてきた。
フランス料理のようなもので、見た目はきれいだ。食文化は発達しているように見える。
「「…いただきます。」」
覚悟を決め、本堂さんと一緒に料理を口に運んだ。
食事を終えて部屋に戻ってきた。
料理は美味しかった。だが、イメージしていた味と違っていた。
見た目は洋食なのに、味は和食…と言えばいいのだろうか。
(不思議な感覚だったな…)
そもそも食事をろくにしたことがなかったからかもしれないが、食べたことがない食感と味の組み合わせだった。おいしいことに変わりなかったが。
コンコンコンコンとノックが響く。
「はい、どうぞ」
「失礼します。シンドウ様、湯浴みの準備が出来ました。」
マリーナさんがお風呂の準備をしてくれたようだ。
「ありがとうございます。」
「…シンドウ様。メイドに敬語はいりません。私のことはどうかマリーナと
お呼びください。」
「分かりま……分かった。教えてくれてありがとうマリーナ。」
「はい。ありがとうございます。」
これだけのことだったが、マリーナと少し仲良くできたような気がした。
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