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豪奢なベルベットのカーテンの隙間から降り注ぐ柔らかな朝日に、智洋はゆっくりと意識を取り戻した。まだ眠たい。瞼が重く、身体も怠い。素肌に触れるシーツの感触を楽しみながら寝返りを打つと、すぐ側に愛しい温もりを感じた。
「ん……」
まだ夢の中にいるらしい彼の色素の薄い髪の毛をサラリと梳くと、なんとも言えない温かな気持ちが溢れ出る。そっと唇を寄せると、甘い香りが鼻腔を擽った。同じシャンプーを使っているのにこうも違うのだから、不思議だ。手触りの良い髪を弄っていると、流石に擽ったくなったのか聖人は眉根を寄せて低く唸り、ごろりと寝返りを打って向こうへ行ってしまった。まるで寝ぐずる幼児のようで小さく笑みを零すと、ジトリと不満げなエメラルドが覗く。
「もう、昨日何時までしてたと思ってんの」
「ごめんごめん、コーヒー淹れてこようか、王子様?」
智洋が戯けてそう言いながら聖人の手を取りその甲に口付けると、聖人は満更でもない顔をして、ゆっくりと両腕を智洋の首に回す。そして首を僅かに傾けて触れるだけの口付けをするのかと思いきや、既のところでにっと蠱惑的に微笑んだ。
「目覚めのキスはないの?」
ゾクリと粟立つ欲望をぐっと堪えると、智洋はその不埒な誘いをかける唇を塞いだ。
「ふふっ」
「ご機嫌だな」
「だって、幸せで…嘘みたい、智くんとこうしてるなんて」
聖人がそう言ってうっとりと目を閉じたので、智洋は再びその唇を塞ぐ。聖人はすぐに応えてくれた。
「あまりしてなかった?」
「………えっと、智くん、医学部で、忙しかったし」
歯切れの悪い言葉は智洋への不満を漏らすことへの躊躇だろうか。こんなにかわいい恋人を放って置くなんて、なんて頼りない男だったのかと落胆すると同時に、何処かで安堵と優越感を覚えた。
「………ごめんね」
その謝罪の意味を追求するよりも早く、今度は聖人からキスを仕掛けられた。最初は戯れのように触れるだけだったそれは、次第に満足できなくなり深く濃いものになっていく。部屋を照らす暖かな朝日とは似つかわしくない淫靡な空気が二人を包み込み、そしてそれに抗うことなく互いの口内を貪った。濃厚な口付けを交わしながら、二人は相手の肌を確かめるように触れ合う。そして智洋の指先はついに、昨夜暴いたばかりの蕾に到達した。
「んっ……あ、智くん……ッ」
「まだ、柔らかいな……」
「あッ、や、んん……」
散々快楽を与えたそこはまだしっとりと濡れており、智洋の指先を簡単に飲み込んでいく。無遠慮な侵入者をまるで確かめるように控えめな収縮を繰り返す内部は、智洋の劣情を煽るばかりだ。
「ん、んッ……!」
中を軽く擦ったり突いたり細やかな悪戯をする度に敏感に反応する聖人を見ていると、智洋はなけなしの理性が焼き切れていくような感覚を覚えた。それでもなんとか獣の様な本能を抑え込み、聖人の細い身体を強く抱きしめ、耳元でいいか、と低く尋ねる。その声にすらビクンと反応した聖人は、耳まで真っ赤になりながらも小さく頷いた。
「聖人……ッ」
「ん、あ、あッ…ぁんッ!」
既に臨戦態勢だったそれをゆっくりと負担ないように埋め込むと、むっちりとした締め付けが堪らなく、智洋は深く息をつく。そうしてやっとの思いで好き放題してしまいたい欲望を抑え込むと、聖人の額に張り付いた髪を払ってやり、現れた白い額にそっと口付ける。そして二人視線を交わらせて小さく笑い合い、ゆっくりと結合を深め始めた。
「ん…智くん、すごい、んッ……」
「何が……?」
「だって、ぁッ……昨日、あんなにしたのに」
「聖人だって、こんな締め付けて」
「あ、やだ、言わないで……ッ!」
恥ずかしがって顔を隠してしまった聖人の機嫌を取るようにあちこちにキスしてやると、ちらりときれいな瞳が覗く。恨めしそうな目をしながらその奥底に期待を見出した智洋は、顔を覆う腕を優しく払って唇を重ねた。舌を絡め取ると、素直に応じてくる。口付けと共に深くなる結合に二人はすぐに夢中になり、激しく求めあった。
「ん、んッ…ふ、ンンッ」
「ふ、はぁッ……聖人、聖人っ!」
「あッ!や、あんッ!ん、ぁ、ああッ……」
昨夜知ったばかりの場所を攻めてやると、聖人は身体を大きく跳ね上げて高らかに鳴いた。快楽を逃がそうとシーツを握る手を取ると、思った以上の力で握り返される。それがまた求められているようで、智洋は笑みを深くした。
「あッ!もう、んッ……智くん、俺、もうッ!」
「ああ、っはぁ、聖人……!」
「あ、ああ…ッ!」
白く薄い胸を大きく反らせ一際高く鳴いた聖人は昨夜から何度も放出した薄い精を僅かに漏らし、絶頂する。その間ギュッギュッと断続的に強く締め付けられた智洋もまた、耐え切れずに欲望を散らしたのだった。
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