第六十三話 「Крабовое мясо(クラヴォヴゥ・ミアッソ)」

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第六十三話 「Крабовое мясо(クラヴォヴゥ・ミアッソ)」

7582b8a1-5306-4f2d-8787-6ca110880eb4"ガチャッ" 「---------...」 "バタンッ" 「------下に着いたのか?」 "ザッ" 「広いっスね・・・」 "ザシャッ" 四人が乗るバンを乗せた エレベーターが突然停まり、 そこから続く、トンネルの様な暗い通路を抜けると ツベフォフは車を停め そのまま外の空間へと降り立つ 「--------...」 "バタンッ! 「....向こうにあるの、柱か何かスか?」 「ずいぶん、数あるネ・・・」 「・・・・」 ツベフォフの後を追い、 三人が目の前に広がる先の見通せない程広く、 明かりが無い空間に降り立つと 三人が立っている場所から かなり先の空間の上空に、 まるで地上へと繋がる様な高さの 巨大な柱が所々に何本も 立っているのが見える 「こっちにも、パイプありますね」 「...そうだな」 地上へと繋がる様な、 巨大な柱以外には何も無い 冷えた空気が漂う場所で隆和が周りを見渡すと、 そこには先程降りて来た地上のドーム内で 見かけたパイプより更に太く、 錆びかけた巨大なパイプの管が 空間内の暗闇に紛れる様に いくつも重なっているのが見える・・・ 「здесь···? (ここは・・・?)」 「・・・・」 この場所に来るまであまり 何も喋らなかったツベフォフが 隆和達の少し先で、振り返る 「Эта жизнь в России-------- (この、ロシアに住む生命-------)」 「------、?」 "バッ" 「・・・・!」 ツベフォフは隆和達に向けていた視線を そのまま天井から、明かりの見えない 黒一色に染まった遥か先の空間の天井へと向ける 「Это все, кто живет в  России, родилось из  этой вечной мерзлоты  в Сибири, и теперь так  питает жизнь. (この、ロシアに生きる全ての者達は、  このシベリアの永久凍土から生まれ、  そして今、この場でその命を  育んでいる-------)」 「Один,господин Цубефов? (つ、ツベフォフさん?)」 「永久凍土...」 「・・・・・」 三人に興味が無いのか、そのまま 瞬(またた)く様に輝いている 頭上の照明をツベフォフが仰ぎ見る 「Мы, вся жизнь в России  Жизни не могут жить,  не причиняя вреда  другим, из--за моделей  поведения,  выгравированных в их  животных инстинктах. (我々、ロシアに住む全ての生命------  その生命達は、その動物的な本能に刻まれた  行動様式により、他者を害する事無くしては  生きていく事ができない------...)」 「???」 「・・・・」 「・・・・」 "フッ" 「・・・・・」 普段の生活では聞いた事が無い様な 難しい単語が口から出ると、 三人は呆けた様な表情を見せ ツベフォフは自嘲気味に軽く笑った様な顔をする 「Эта русская земля  взращена в вечной  мерзлоте-------- (永久凍土の中に育まれた、  このロシアの大地-------)」 「вечная мерзлота... (永久凍土...)」 "ガサッ! 「Вы не можете прожить  свою жизнь, не  злоупотребляя  существованием других. (アナタ達は、他者の存在を  虐(しいた)げる事無くしては、  その生命を全うする事ができない------)」 「・・・・!」 "ガササッ! 「(中根・・・・)」 「Жизнь----! (生命を------!)」 "ガサッ "ガササッ!" 「Ну точно....Могумогу...  Жизнь...! Мог...Могмог... (た、確かに------....モグモグ...  生命------...!  モグ...モグモグモグ...)」 "バサッ! 中根は、感心をした様な表情を見せながら、 そのまま口にしていた何かカマボコの様な 食料が入ったビニール袋を空間の地面に投げ捨てる 「(Крабовое мясо)  (クラヴォヴゥ・ミアッソ------)」 "ガサッ! ガササッ! 「мы---- (我々は--------)」 "ガサッ! すでに自分の言葉に酔っているのか、 中根がポケットから Крабовое мясо (クラヴォヴゥ・ミアッソ=ロシア風カニかま) を取り出し、舐めた目つきで自分を見てくるが 既に視界に入っていないのか ツベフォフは目の前の男を無視して そのまま言葉を続ける.... 「Труба, ведущая к этому  подземному объекту,  заполнена природным  газом, добываемым на  месторождении газойля  в России. (この、地下施設に通っているパイプは、  ロシアのガス油田から産出された  天然のガスが通っている------...)」 「が、ガス?」 「ガスねえ・・・」 "ガサッ! ガササッ! "ザッ!" 「・・!」 "ザッ ザッ ザッ ザッ--------... 「------どうしたんスか?」 「・・・・」 突然背を向けると、ツベフォフはそのまま 隆和達から離れ、空間内の暗がり、 どこまで続いているかも分からない 空間の奥の闇へと溶け込む様に消えていく・・・ 「・・・・」 「ガス施設か何かって事なのか------?」 「・・・分からんス」 「・・・・」 "バサッ! 「・・・・」 何も無い、暗く広い深淵の暗闇の中に、 中根が捨てたクラヴォヴゥ・ミアッソの 空き袋が地面に落ちる音だけが響く-------- 「(ガス施設--------....)」
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