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「私もね、セツお姉ちゃんにも一回逢うことができて、本当に良かったと思ってるの。だってもう二度と逢えないかもしれないって思ってたから・・・」
「私も、ユウに再会することができてあの時はすごく嬉しかったよ。」
「だけど・・・」
暗い表情のまま続けようとするユウに、セツは「ん?」と声を漏らした。
「本当に、このままでいいのかな・・・?」
「どういうこと?」
「だって、あれからセツお姉ちゃん一歩も外に出れてなくてずっとこの部屋にいるから、もしかしたら私、セツお姉ちゃんを閉じ込めてるんじゃないかって・・・」
【童女ノ谷】での一件でユウと再会を果たしながらも、セツは未だに外を出歩いたことはなかった。
屍葬士であるユウが、屍神であるセツと交流していることが発覚してしまっては、彼女に迷惑をかけることになると考えたセツが提案し、ユウもそれを渋々承諾したからだ。
だがユウ自身は、結果としてセツを籠の鳥にしてしまっているのではないかと思い、罪悪感でいっぱいだった。
不安な顔をしながら今にも泣きそうになるユウの手を、セツはそっと自分の手を添えた。
「ユウが気に病む必要なんかないわ。だってこれは私が自分で決めたことなのだから。」
「でも・・・!でも、私、本当は・・・」
その時、部屋に置かれた受付所に繋がる内線電話が「プルルルルルル・・・!!」とけたたましく鳴った。
ユウが出ると、声の主は下にいるハキからだった。
「あっ、ユウさん!下にご依頼主さまがいらっしゃってます。ユウさんに仕事を頼みたいと・・・」
ユウは急いで了解の返事をし、荷物と武器を持って下の受付所に降りることにした。
「ごめんセツお姉ちゃん。ちょっと行ってくるね。」
「ユウ。」
呼び止められたユウは、靴を履きながらセツの方に目をやった。
「私、部屋の外から三回ノックが聞こえてくるの、いつもすごく楽しみにしてるの。お願いだからそんなに自分を責めないで。私はユウとこうして一緒にいることができるだけでも、どうにかなってしまうほど嬉しいのだから・・・」
ユウは黙りこくったまま、部屋のドアを開けて外の廊下へと出て行った。
(セツお姉ちゃんはああ言ってくれたけど、でも私は、やっぱりセツお姉ちゃんに、外の世界にいっぱい触れてほしい。私が何とかしなくちゃ。私がセツお姉ちゃんを外に出してあげるんだッッッ!!!)
決意を固め、両方の拳をギュッと握りしめながら、ユウは下の集会所で待つ依頼主の許へと逞しい歩みで向かっていくのだった。
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