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第陸拾漆話 信条と再決
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
(・・・。)
「・・・。」
『重苦しい。』
今この一行を包み込む空気はまさにこの一言に尽きるであろう。
早朝、他の者に見つからないように斡場の裏口でモナ(メア)とカノはユウとセツの二人と待ち合わせをしたのだが、彼女らの様子がどうもオカシイ。
何がオカシイと言うと、両者の間に会話が一切ない。
ユウは今にもベソをかいてしまいそうな顔で終始俯いているし、セツの方はブスぅ~っとしたしかめっ面を決め込んでユウに話しかけようとしない。
その時二人、厳密にいえばモナの中にいるメアを入れて三人は察した。
ゼッタイこの二人深夜にケンカした。
その理由は言わずもがな、今回の依頼。
何故なら、今まで屍葬の仕事に付いて来ることがなかったセツが、今朝急にユウと待ち合わせ場所に現れたことから推測できる。
出発する前にモナが「どうして、一緒に・・・?」とセツに我慢できなく聞いたがセツは冷めきったような声と表情で「そんなのどうだっていいでしょ。」と会話をブッタ切った。
堪らずメアが「どうだってよかぁねぇだろ!」と言おうとしたがグッと抑えた。
だってその時のセツがメチャクチャ怖かったから・・・
ボソ「オイ、カノ。お前なんか聞いて来いよ。」
メアがカノに耳打ちしたが、カノは「そんなのできるワケないだろッ!」と言わんばかりに頭をブンブン振って拒否した。
だってモナが返り討ちにあったのに、自分まで理由を問いただしたら下手すれば激昂するかもしれない・・・
今のセツからは、それほどの怒りの熱気を帯びていた。
ボソ「じゃあユウの方になんか聞けよ・・・」
メアとカノはさりげなく後ろを振り返ってユウを見た。
眉は下に垂れ、瞳には光が灯っておらず時折「はぁ・・・」とか細いため息を漏らしていた。
ウン、ソウトウオチコンデイル・・・
そんな雰囲気がビンビン伝わっていた。
その様子を見たメアとカノはとても聞くに聞けなかった。
メアは頭を抱えた。
こんなどんよりと重苦しい空気では、これから会いに行く人に妙な気を遣わせてしまうかもしれない。
流石にそれは申し訳がない。
「「二人の仲をどうにか取り繕なければならない。」」とモナとメアが思考を巡らせている最中、とうとう目的の場所についてしまった。
モナとメアの今回の依頼人の女性の家である。
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